糖尿病患者のCKD進行を遅らせる新しい治療法 CREDENCE試験とSONAR試験は糖尿病腎症患者にとって吉報に
2019.09.25
欧州腎臓協会-欧州透析・移植協会(ERA-EDTA)が、糖尿病腎症患者を対象としたCREDENCE試験とSONAR試験の結果を受けて、「糖尿病腎症患者にとって素晴らしいニュースだ」とリリースを発表した。
SGLT2阻害薬とエンドセリン受容体拮抗薬は2型糖尿病患者の腎臓病進行を遅らせる
CKD(慢性腎臓病)の治療はその病因により決定されるが、選択肢は限られている。CKDの進行に有意に影響し、治療介入が認められているのは、長らくRAAS(ACE阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB))だけだった。 そのため、SGLT2阻害薬が糖尿病腎症の管理において重要なブレークスルーとなることを示した報告は反響を呼んだ。世界の約8億5,000万人が腎疾患の影響を受けており、その3分の1にあたる約2億8,000万人が糖尿病が原因の腎不全患者だ。CKDの効果的な治療が待たれている。 糖尿病腎症を有する2型糖尿病患者を対象にSGLT2阻害薬カナグリフロジンの腎保護作用を検証したCREDENCE試験の結果は希望をもたせるものだった。「この薬で患者を助けられるというエビデンスを得られたことは喜ばしい」と、欧州腎臓協会-欧州透析・移植協会(ERA-EDTA)の理事長でイタリアの臨床生理学研究所の腎臓専門医であるCarmine Zoccali教授は言う。 CREDENCE試験は、2014~2017年に日本を含む34ヵ国690施設で2型糖尿病患者4,401例を対象に実施された。尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)300〜5000mg/gCr、推算糸球体濾過量(eGFR)30~90mL/分/1.73m²の患者をSGLT2阻害薬カナグリフロジン投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けした二重盲試験で、追跡期間の中央値は2.62年だった。 カナグリフロジン群では、末期腎不全(ESRD)、血清クレアチニンの倍化、腎原因による死亡の相対リスクが34%低下することが示された(HR 0.66; 95% CI, 0.53 to 0.81; p<0.001)。さらに、末期腎疾患の相対リスクは32%低下し(HR 0.68; 95% CI, 0.54 to 0.86; p=0.002)、心血管死のリスクも低かった。同試験は予想を大きく上回る結果を残し予定よりも早く終了した。 「慢性腎疾患の患者が他の多くの健康転帰、とくに危険な心臓合併症のリスクが高いことを知らない人はいまだに多い。透析に進展するリスクを減らすだけでなく、心血管の予後と生存率の改善にもつながる治療法が確立することが待たれている」と、Zoccali教授は言う。 慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者で、高濃度のアルブミン尿がある患者を対象に、エンドセリン受容体拮抗薬のアトラセンタン、またはプラセボを経口投与して腎不全への進行抑制効果を比較したSONAR試験では、アトラセンタンが末期腎疾患と血清クレアチニンの倍化という腎疾患複合イベントを35%低下したという結果が報告された(HR; 0.65 [95% CI 0.49-0.88]; p=0.0047)。 「2件の試験はどれも、糖尿病腎症患者にとって素晴らしいニュースとなった。新しい治療法が安全かつ効果的であると証明されない時期が長く続き、臨床に新薬を導入することはできなかったからだ。いまや我々は異なる治療目標で2つの新しい治療を行うことができ、それらを組み合わせることもできる」と、Zoccali教授は指摘している。 Novel therapies slow CKD progression in patients with diabetes(ERA-EDTA 2019年4月26日)Canagliflozin and Renal Outcomes in Type 2 Diabetes and Nephropathy(New England Journal of Medicine 2019年4月15日)
Atrasentan and renal events in patients with type 2 diabetes and chronic kidney disease (SONAR): a double-blind, randomised, placebo-controlled trial(Lancet 2019年4月14日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]