イーライリリーの新規の超速効型インスリン「URLi」 第3相試験の結果をADA2019で発表
2019.06.20
イーライリリーの新規の超速効型インスリン「URLi」の、1型および2型糖尿病患者を対象とした第3相試験の結果が、第79回米国糖尿病学会学術集会(ADA2019)で発表された。
「URLi」は、ヒューマログとの比較で、同様のHbA1c低下と優れた食後血糖値の抑制を示した
「URLi」は、ヒューマログとの比較で、同様のHbA1c低下と優れた食後血糖値の抑制を示した
インスリン リスプロの皮下からの吸収を早めた製剤を開発
イーライリリー・アンド・カンパニーの新規の超速効型インスリン「Ultra Rapid Lispro(URLi)」はヒューマログの有効成分であるインスリン リスプロの皮下からの吸収を早めた製剤。 「URLi」が、ヒューマログ(インスリン リスプロ)に対し、26週時点のHbA1c低下について非劣性を示した1型および2型の糖尿病患者を対象とした2つの第3相臨床試験の結果が、第79回米国糖尿病学会学術集会で発表された。 これらの試験はtreat-to-target試験として実施され、「URLi」がヒューマログと比較して食事負荷試験の食後1時間および2時間の血糖値上昇を有意に抑制することも示した。 また、1型糖尿病患者を対象とした試験では、「URLi」が日中の目標グルコース値範囲内時間を有意に改善したことが示された。「URLi」のヒューマログに対する非劣性を示す
「PRONTO-T1D」試験および「PRONTO-T2D」試験は、それぞれ成人の1型および2型糖尿病患者を対象とし、インスリングラルギンまたはインスリン デグルデクと併用した新規の超速効型インスリン「URLi」およびヒューマログ(インスリンリスプロ)の無作為化二重盲検対照treat-to-target比較試験。それぞれ1,222名および673名が参加した。 食事時に「URLi」とヒューマログを投与し、ベースラインから26週時点におけるHbA1cの低下を比較したところ、「URLi」のヒューマログに対する非劣性が示され、両試験ともに主要目的が達成された。 さらに、「URLi」はヒューマログに比べ、食後血糖値の上昇の低減について、食事負荷試験の食後1時間値(-27.9mg/dL[T1D試験]、-11.8mg/dL[T2D試験])および2時間値(-31.2 mg/dL[T1D試験]および-17.4mg/dL[T2D試験])ともにより有意な低下を示した。 低血糖はもっとも多く認められるインスリン関連の副作用だが、いずれの試験でも試験参加者の報告による重症低血糖・夜間低血糖・全低血糖の発現率に統計学的な有意差は認められなかった。「URLi」は目標血糖範囲内時間が長い
「PRONTO」試験はtreat-to-target試験としてデザインされたため、臨床医は低血糖の発現率、食後血糖コントロールや目標血糖範囲内時間など、同レベルの血糖コントロール下における他の重要な治療効果の違いを判断することがでる。 「PRONTO-T1D」試験参加者の一部を対象に、盲検下で持続血糖モニタリングを用いて、1日の血糖推移を評価したところ、26週時点で、「URLi」はヒューマログと比較して朝食後4時間まで良好な血糖プロファイルを示した。 さらに、「URLi」はヒューマログと比較して日中の目標血糖範囲内(71~180mg/dL)時間が有意に長く(+43.6分)、夜間の目標血糖範囲内時間も同様であったことが示された。 1型糖尿病患者を対象とする第1相臨床薬理試験の結果でも、食後血糖コントロールに対する「URLi」の効果が示された。「URLi」はヒューマログ、インスリン アスパルトおよび新規の超速効型インスリン アスパルトと比較して皮下からの吸収が有意に早いことが示された。 また、「URLi」の食事負荷試験後の食後血糖値上昇幅は数値の上でこれらのインスリンと比較して低く、特にヒューマログおよびインスリン アスパルトとの比較では統計学的に有意に低いことが示された。 加えて「URLi」を投与した糖尿病患者の初期血糖プロファイルは、糖尿病ではない参加者の初期血糖プロファイルとよく類似していた。 「URLiは臨床試験でヒューマログと同様のHbA1cの低下を示し、食事負荷試験による食後血糖値が有意に改善した。URLiが承認された暁には食事時インスリン治療における新しい選択肢になる」と、リリー糖尿病事業部インスリン製品開発のシニアメディカルディレクターであるトーマス ハーディー氏は述べている。 イーライリリーは、欧州および日本で「URLi」に関する承認申請を行った。今年の後半には米国でも承認申請を行う予定だ。 日本イーライリリー[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]