「フェロトーシス」が脂肪肝からNASHへの引き金に 阻害すると肝炎をほぼ完全に抑制

2019.06.20
 国立国際医療研究センター研究所はマウスを用いた研究から、「フェロトーシス」と呼ばれる特殊な細胞死が、脂肪肝からNASH発症への引き金を引いていることを明らかにした。

NASH発症の直接の引き金となる細胞死を解明

 国立国際医療研究センター研究所は、これまで鉄依存的、過酸化脂質依存的な細胞死として報告されていた「フェロトーシス」が、脂肪肝内でもっとも早く起きる細胞死であることを突き止めた。また、「フェロトーシス」を阻害することで肝炎の発症をほぼ完全に抑制できることも確認した。

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、メタボリックシンドロームの肝臓の表現型のひとつと考えられており、日本では約200万人が罹患していると推定されている。脂肪肝の中でどのような細胞死が起こり、NASH発症への引き金を引いているのかについては不明の点が多い。

 炎症の原因となりうる細胞死の研究分野では、近年、細胞が自ら死のプログラムを実行することで死に至る「計画的細胞死」と呼ばれる現象が明らかにされており、さまざまな疾患の発症や病態形成における計画的細胞死の役割や意義が注目されている。

 脂肪肝からのNASH発症では、脂肪の異常蓄積による肝細胞死の関与が指摘されているが、どのような細胞死が原因となっているのかについては不明だった。そこで研究グループは、脂肪肝からNASHが発症する過程で、どのような細胞死が起きているのかを詳細に調べた。

脂肪肝からNASHを発症する起点に「フェロトーシス」が関与

 まず、細胞死の様式はアポトーシスとネクローシス(壊死)に大別されるため、肝臓内でどちらの細胞死が起きているのかを簡便に調べる方法を確立した。

 この方法を用いて、コリン欠乏エチオニン添加食餌によるNASHモデルマウスの肝臓を調べたところ、NASH発症後にはアポトーシスとネクローシスの両方の細胞死が混在した状態にあることが分かった。

 そこで、どちらの細胞死が先に起きているのかを食餌投与後から時間を追って調べたところ、ネクローシスが先行して起きることで肝炎を発症していることが明らかになった。
 さらに詳細に、どのような様式のネクローシスがNASH発症の引き金となっているのかを調べるため、特定の細胞死のみを阻害するような遺伝子改変マウスや阻害剤を用いて検討した。

 その結果、ネクロプトーシスと呼ばれる計画的細胞死を阻害しても、肝細胞死は抑制できずに肝炎を発症したが、「フェロトーシス」と呼ばれる計画的細胞死を阻害した場合、肝細胞死は抑制されるとともに、その後の炎症もほぼ完全に抑制された。

 これまでに線維化や発癌といったNASH発症後の病態の進展には、ネクロプトーシスやアポトーシスといった計画的細胞死が関与するという報告はあったが、NASH発症の直接の引き金となる細胞死については不明だった。

「フェロトーシス」を標的としたNASHの予防法や治療法を開発

 今回の研究は、脂肪肝からNASHを発症する起点に「フェロトーシス」という細胞死が関与することを、モデルマウスを用いた実験系で初めて明示し、「フェロトーシス」の実行分子がNASHの予防や治療のための標的となりうることを示すものだ。

 今回の結果から、NASH発症における「フェロトーシス」の関与およびその阻害による予防効果が明らかになった。研究グループは今後、他のモデルマウスでの検証や、病態進展における「フェロトーシス」の役割や阻害効果についても検討していくとしている。

 「フェロトーシス」の実行に関わる細胞内のプログラムを解読し、その関連分子が明らかになれば、それらを標的としたこれまでにないNASHの予防法や治療法の開発につながることが期待される。

 研究は、国立国際医療研究センター研究所・細胞組織再生医学研究部の鶴崎慎也研究員、田中稔室長らを中心とする研究グループによるもの。研究成果は「Cell Death & Disease」オンライン版に掲載された。

国立国際医療研究センター研究所 細胞組織再生医学研究部
Hepatic ferroptosis plays a potential role as the trigger for initiating inflammation in nonalcoholic steatohepatitis(Cell Death & Disease 2019年6月18日)

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