メトホルミンの添付文書改訂へ 禁忌の「腎機能障害」はeGFR30未満に 厚労省・安全対策調査会
2019.06.06
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会は5月31日、2型糖尿病治療薬のメトホルミン含有製剤について、eGFR(推算糸球体濾過量)30未満の重度の腎機能障害患者のみを禁忌とするよう添付文書を改訂することを決めた。近く添付文書改訂の通知が発出される。
重度の「腎機能障害」のみ禁忌
脱水やアルコール摂取への注意を喚起
ビグアナイド系薬剤であるフェンホルミンによる重篤な乳酸アシドーシスの副作用が報告されて以来、国内および海外で同じくビグアナイド系薬剤であるメトホルミンの添付文書にて乳酸アシドーシスに関連する注意が喚起されており、腎機能障害患者については、腎機能の程度に応じて使用が制限されている。
日本糖尿病学会の「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」では、腎機能をeGFRで評価し、30mL/min/1.73m²未満は禁忌、30~45mL/min/1.73m²は慎重投与することが示されている。
一方で、腎機能障害患者におけるメトホルミンの安全性について、海外の添付文書が改訂され、軽度から中等度の腎機能障害患者でもメトホルミンを用いた場合は、薬物濃度はおおむね治療範囲内にとどまり乳酸濃度は大幅に上昇しないことや、乳酸アシドーシスの発現リスクは製剤により違いがないことなどが示された。
これらを受けて安全対策調査会は、日本糖尿病学会の賛同を得て、メトホルミン含有製剤の添付文書における、腎機能障害患者および乳酸アシドーシスに関する注意喚起についての見直しを検討した。
国内で販売されているメトホルミン塩酸塩は、メトグルコ錠250mg、500mg(大日本住友製薬)、グリコラン錠250mg(日本新薬)などがある。1日最高用量は、メトグルコ錠では2,250mg、グリコラン錠では750mg。腎機能障害患者については、高投与製剤は中等度以上の患者が、低投与量製剤は軽度から重度の患者が、それぞれ禁忌とされている。
メトホルミンは腎排泄型の薬剤であり、メトホルミンの血中濃度は、腎機能障害の程度に応じて高くなる。減量により、中等度腎機能障害患者におけるメトホルミンの血中濃度を腎機能正常患者と同程度に低減可能だ。
日本で報告された乳酸アシドーシスの副作用347例のうち、中等度の腎機能障害患者(eGFR30~60 mL/min/1.73m²)43例の大半は、腎機能以外のリスク因子(脱水、心血管系疾患など)が認められている。
これらの調査結果をふまえ、メトホルミン含有製剤の添付文書について、以下の改訂が了承された。(1)腎機能障害患者に係る禁忌は重度の腎機能障害患者(eGFR<30)のみとする。
(2)経口摂取が困難な場合などの脱水のリスクや、過度のアルコール摂取には特に注意が必要である旨を追加するとともに、その他乳酸アシドーシスに関連する注意を整理する。
(3)eGFRにもとづき腎機能障害患者に係る1日最高用量の目安を記載する。
eGFR (mL/min/1.73m²) 目安量ごとのメトホルミン最高用量
60≦eGFR<90 | 2,250mg |
45≦eGFR<60 | 1,500mg |
30≦eGFR<45 | 750mg |
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]