SGLT2阻害薬9製品が使用上の注意を改訂 まれに性器感染症から壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)が 因果関係を否定できないと注意喚起

2019.05.16
 厚生労働省は5月9日、SGLT2阻害薬含有製剤9製品の使用上の注意に対し、重大な副作用の項に「外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)」に関する注意の追記を求める改訂指示を出した。
 国内で因果関係を否定できない副作用症例が報告されたことなどを受けた措置で、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が改訂情報を公開した。

SGLT2阻害薬とフルニエ壊疽 影響を否定できない

 SGLT2阻害薬投与時の外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)の発生機序は明確にはなっていないものの、SGLT2阻害薬の薬理作用(尿中グルコース排泄促進作用)の影響を否定できないとしている。

 関連症例は、エンパグリフロジンで1例が報告されている(うち、因果関係が否定できない症例が1例)。

 添付文書には、重要な基本的注意として「十分な観察を行うなど尿路感染及び性器感染の発症に注意し、発症した場合には適切な処置を行うとともに、状態に応じて休薬等を考慮すること」「尿路感染及び性器感染の症状及びその対処方法について患者に説明すること」等が記載される。

 フルニエ壊疽はまれな疾患だが、SGLT-2阻害薬との関連については、FDAも「因果関係を証明するものではない」としながらも注意喚起をしている。

販売名(一般名)
(1)スーグラ錠25mg、同錠50mg (アステラス製薬)
一般名:イプラグリフロジンLプロリン

(2)フォシーガ錠5mg、同錠10mg (アストラゼネカ)
一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物

(3)アプルウェイ錠20mg (サノフィ)、デベルザ錠20mg (興和)
一般名:トホグリフロジン水和物

(4)ルセフィ錠2.5mg、同錠5mg (大正製薬)
一般名:ルセオグリフロジン水和物

(5)カナグル錠100mg (田辺三菱製薬)
一般名:カナグリフロジン水和物

(6)ジャディアンス錠10mg、同錠25mg (日本ベーリンガーインゲルハイム)
一般名:エンパグリフロジン

(7)カナリア配合錠 (田辺三菱製薬)
一般名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物

(8)スージャヌ配合錠 (MSD)
一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物/イプラグリフロジンL-プロリン

(9)トラディアンス配合錠AP、同配合錠BP (日本ベーリンガーインゲルハイム)
一般名:エンパグリフロジン/リナグリプチン

改訂の概要
1.「重要な基本的注意」の尿路感染、性器感染に関する記載の項に、外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)に関する注意を追記する。
2.「重大な副作用」の項に「外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)」を追記する。

改訂の理由および調査の結果
以下の点を踏まえ、専門委員の意見もふまえた調査の結果、外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)に関する注意喚起を追加することが適切と判断した。
・ 国内において、SGLT2阻害薬との因果関係が否定できない外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を認めた症例が報告されていること
・ 海外において、SGLT2阻害薬服用後に当該事象を認めた症例が集積していること
・ WHO個別症例安全性報告(ICSRs)グローバルデータベース(VigiBase)*を用いた不均衡分析において、複数のSGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン)でフルニエ壊疽または壊死性筋膜炎の副作用報告数が、データベース全体から期待される値より高いことが統計学的に示されているが、他の糖尿病用薬ではこのような傾向は示されていないこと。
* 情報源はさまざまであり、疑われた副作用が医薬品と関連する可能性はすべての症例で同一ということではない。
・ SGLT2阻害薬投与時の外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)の発生機序は明確にはなっていないものの、SGLT2阻害薬の薬理作用(尿中グルコース排泄促進作用)の影響も否定できないこと。

直近3年度の国内副作用症例の集積状況
【転帰死亡症例】
外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)関連症例
(1)~(5)、(7)~(9) 0例
(6) 1例(うち、因果関係が否定できない症例1例)
【死亡0例】

医薬品医療機器総合機構(PMDA) 使用上の注意の改訂指示通知(医薬品)
Fournier Gangrene Associated With Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors: A Review of Spontaneous Postmarketing Cases(Annals of Internal Medicine 2019年5月7日)

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