高体重が慢性腎不全(CKD)患者の短期予後の予測因子に 糖尿病では肥満のメリットは減弱 2万6,000人を調査
2018.12.25
透析期腎不全患者のみならず、透析導入となっていない時期の慢性腎不全患者においても、BMI高値が予後良好の予測因子になることが、東京医科歯科大学大学の2万6,000人を対象とした調査で明らかになった。
国内大規模 2万6,000人のDPCデータベースを使用
慢性腎臓病(CKD)は、進行すると末期腎不全となり透析療法を必要とするだけでなく、心疾患やサルコペニアなどの重大な合併症を引き起こし予後不良となる。 CKD患者は、塩分制限や蛋白摂取制限などで、摂取カロリーが制限される傾向にあり、それが生命予後に与える影響は明らかにされていない。 また、透析患者では、BMI(体格数)が高値であると生命予後が良好である傾向があるという現象が「肥満パラドックス」として注目されている。 しかし、透析導入となっていない保存期の慢性腎臓病(CKD)患者での至適BMI管理については、CKDの病態の複雑さ、多様さから研究が困難であり、画一的な基準がないのが現状だ。 東京医科歯科大学の研究グループは、国内の大規模データベースであるDPCデータを用いて、緊急入院となった約2万6,000人の透析導入となっていないCKD患者を抽出し、感染症合併の有無、糖尿病合併の有無で層別化を行い、各群におけるBMIと院内死亡率の関連を検証した。 「DPC(Diagnosis Procedure Combination)」は、分析可能な日本全国統一形式の患者臨床情報・診療行為の電子データセットで、全国で1,700以上の病院が参加しており、日本の全入院患者数の約50%の患者データをカバーしている。 その結果、感染症合併群では糖尿病の有無に関わらずBMI高値になるにつれて予後良好となる傾向が認められた。しかし、糖尿病を合併する場合は、感染症非合併群では、超高体重群において予後良好とならなかった。 糖尿病を合併していないCKD患者では、感染症合併の有無に関わらず、高体重が短期予後良好と関連する傾向が示された。 これにより、CKD患者において十分なカロリー摂取と体重維持がより重要視される可能性が示された。 研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 茨城県腎臓疾患地域医療学寄附講座教授の頼建光教授と医療政策情報学分野の伏見清秀特別研究教授、腎臓内科の菊池寛昭氏の研究グループによるもの。 文部科学省科学研究費補助金の支援のもとで行われており、その研究成果は科学誌「PLOS ONE」オンライン版に発表された。糖尿病を合併する患者では肥満のメリットは減弱
研究グループは、DPCデータを用いて、過去3年分の日本全国の入院患者情報、処方内容、診療内容などを収集し、緊急入院(非計画入院)となった約2万6,000人の透析未導入のCKD患者でのBMIと入院時死亡の関係について検証した。 まず、抽出症例のBMIを四分位数を用いて4群(Q1-Q4)に分割し、さらに感染症の合併の有無で分け、全てで8群に分割した。主要評価項目は入院後100日以内の院内死亡とし、Cox比例ハザード解析を用いて検証した。 その結果、痩身(Q1)は炎症性疾患合併の有無に関わらず、死亡リスクを増大させることが分かった(HR: 1.82; 95% CI 1.51-2.19、HR 1.39; 95% CI 1.16-1.67)。また、BMIが高ければ高いほど、入院中の予後が良好となる傾向が示された。Short-term prognosis of emergently hospitalized dialysis-independent chronic kidney disease patients: a nationwide retrospective cohort study in Japan(PLOS ONE 2018年11月29日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]