SGLT2阻害薬「ジャディアンス」のリアルワールド研究「EMPRISE」 2型糖尿病患者の心不全による入院リスク低下との相関を示す
2018.11.16
日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、SGLT2阻害薬「ジャディアンス」(一般名:エンパグリフロジン)について、米国の日常診療において、ジャディアンスはDPP-4阻害薬と比較して、心不全による入院リスクを44%低下させることと相関すると発表した。
初のリアルワールド研究 心不全による入院リスク低下との相関を示す
リアルワールドエビデンス研究「EMPRISE」は、心血管疾患の既往に関わらず、2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬と比較して、ジャディアンスの日常診療での有効性、安全性、医療資源の利用性および医療費に関するデータを提供し、「EMPAREGOUTCOME」試験を補う目的で始まった。2014年8月~2016年9月に収集された約3万5,000人のデータをもとにしている。 このリアルワールド研究「EMPRISE」の最初の解析結果は、シカゴで開催された米国心臓学会(AHA)の2018年年次集会で発表された。 解析した結果、ジャディアンスは一般的に使用されているDPP-4阻害薬と比較して、心不全による入院リスク低下(44%)と相関することが示された。 ジャディアンスと心不全による入院リスク低下との相関は、心血管疾患の既往に関わらず一貫していた。 「EMPA-REG OUTCOME」試験では、心血管疾患既往の2型糖尿病患者において、ジャディアンスを標準治療に上乗せした場合にプラセボと比較して、心不全による入院(副次評価項目)リスクが35%低下した。今回の調査をそれを裏付けるものだ。 「EMPRISE」研究は、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の薬剤疫学部門とハーバード大学医学部の共同研究者が主導し、同病院とベーリンガーインゲルハイムの共同研究の一部として実施されている。研究終了までに米国の2つの民間医療供給者とメディケアを利用する20万人以上の2型糖尿病患者の医療記録を分析する予定。 2019年以降は、アジアとヨーロッパ地域を含む「EMPRISE」研究において、世界のさまざまな地域での日常診療での知見が提供される予定。 「米国では毎年心不全による入院が100万件を超えており、EMPA-REG OUTCOME試験で確認された心不全による入院リスクの低下が日常診療に反映できるか判断することが重要だ。EMPRISE研究の最初の解析結果は、ジャディアンスが心不全による入院リスクの低下と相関すること、またその相関は2型糖尿病患者において、心血管疾患の既往に関わらず一貫していることを示している」と、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院薬剤疫学・薬剤経済学部門およびハーバード大学医学部内科助教授で共同研究者であるElisabetta Patorno氏は言う。 「EMPRISE研究の最初の解析結果は、DPP-4阻害薬と比較して、ジャディアンスは心血管疾患の既往に関わらず2型糖尿病患者の心保護にベネフィットがあることを示唆している」と、同社のWaheed Jamal氏は言う。 ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)は1日1回経口投与のSGLT2阻害薬で、複数の国の添付文書に心血管死のリスク減少に関するデータが記載されている。なお、日本におけるジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少、慢性心不全、慢性腎臓病に関連する効能・効果は取得していない。[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]