肥満症治療剤「BELVIQ」 大規模心血管疾患アウトカム試験の結果を公表

2018.08.31
 エーザイは、肥満症治療剤「BELVIQ」の心血管疾患アウトカム試験の結果について公表した。同剤は、心血管イベントのリスクを増加させないことが確認されたはじめての体重管理を目的とする治療薬となる。

1万2,000人対象の心血管疾患アウトカム試験

 エーザイは、肥満症治療剤「ロルカセリン hydrochloride(米国製品名:BELVIQ)」に関する、市販後臨床試験として実施した心血管疾患アウトカム試験(CAMELLIA-TIMI61試験)の結果について、ドイツ・ミュンヘンで開催されている欧州心臓病学会総会(ECS Congress 2018)において口頭発表するとともに、「the New England Journal of Medicine」に掲載されたことを発表した。

 同試験は、TIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)Study Groupとの提携のもと、米国を含む8ヵ国、400施設以上で実施された、肥満症治療に関する最大規模の心血管疾患アウトカム試験。米国食品医薬品局(FDA)の要求に基づく市販後臨床試験としても実施された。

 同試験では、過体重および肥満の成人患者で、心血管疾患をすでに有している、もしくは心血管疾患のリスク因子を伴う2型糖尿病を有する人、合計1万2,000人を対象に、「BELVIQ」10mg錠またはプラセボ錠を1日2回長期(中央値3.3年間)投与し、主要な安全性評価として、主要心血管イベント(MACE:心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発生頻度を評価した。

 同試験に登録された患者の平均年齢は64歳、平均BMIは35だった。また、ベースラインで、患者の57%は2型糖尿病、90%は高血圧、94%は脂質異常、20%は慢性腎臓病、約75%がアテローム動脈硬化性心血管疾患を有していた。

心血管イベントのリスク増加は確認されず

 試験終了時のMACEの発生数はBELVIQ投与群で364人/6,000人(発生率として2.0%/年)、プラセボ投与群で369人/6,000人(発生率として2.1%/年)であり、BELVIQ投与群は、プラセボ投与群と比較してMACEの発生頻度を増加させず(ハザード比0.99、95%CI0.85-1.14,非劣性マージン1.4)、主要な安全性評価の目的である統計学的非劣性を達成した。

 主要な安全性評価目的を達成したことを受け、主要な有効性評価として、MACEに「入院を要する不安定狭心症もしくは心不全、または冠血行再建術」項目を加えたMACE+についても評価。その結果、MACE+の発生数はBELVIQ投与群で707人/6,000人(発生率として4.1%/年)、プラセボ投与群で727人/6,000人(発生率として4.2%/年)であり、統計学的優越性は示されなかったが(p=0.55)、統計学的非劣性が確認された(ハザード比0.97、95%CI=0.87-1.07,非劣性マージン:1.4)。

 また、探索的評価項目である有効性について、1年間投与による5%以上の体重減少はBELVIQ投与群では39%、プラセボ投与群では17%、10%以上の体重減少は、BELVIQ投与群では15%、プラセボ投与群では5%であり、それぞれBELVIQ投与群がプラセボ投与群に比較して有意な体重減少を示した(5%以上の体重減少:名目p<0.001、10%以上の体重減少:名目p<0.001)。ベースラインからの体重変化は、BELVIQ投与群では平均4.2kgの減少、プラセボ投与群で平均1.4kgの減少となり、BELVIQ投与群ではプラセボ投与群と比較して平均2.8kgの実質的体重減少をもたらした(名目p<0.001)。

2型糖尿病患者ではHbA1cが減少

 さらに、併存疾患に対する標準治療に加え、BELVIQ投与(1年間)を行うことで、それぞれの併存疾患指標について、収縮期血圧(プラセボとの差:-0.9mmHg)、拡張期血圧(同:-0.8mmHg)、心拍数(同:-1.0拍/分)、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール(同:-1.2mg/dL)、中性脂肪(同:-11.7mg/dL)および非高比重リポ蛋白(非HDL)コレステロール(同:-2.6mg/dL)と改善が見られた。

 2型糖尿病患者では、HbA1cが減少し(ベースラインからのプラセボとの差:-0.3%)、糖尿病発症前段階からの糖尿病新規発病の割合が低下した(発病率:BELVIQ投与群:3.1%/年、プラセボ投与群:3.8%/年)。

 なお、この試験のさらなる解析結果についてはドイツ・ベルリンで開催される欧州糖尿病学会(European Association for Study of Diabetes)年次総会において10月4日(現地時間)に発表予定。

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