「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」の全国の普及率は76%超 下肢切断を防ぐために

2018.06.28
 「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」を申請している透析施設は、全国の76.6%に上ることが、一般社団法人「Act Against Amputation」(AAA)の調査で明らかになった。

CLIが悪化し歩行困難になるとADLが低下

 透析患者のフットケアは注目されている。透析患者の重症下肢虚血患者が増加しているからで、その背景に糖尿病性腎症から透析となる患者の増加、透析患者の高齢化などがある。

 「重症下肢虚血」(CLI)は、「末梢動脈疾患」(PAD)が重症化した病態で、脳梗塞や心筋梗塞などの循環器系の虚血を合併する予後不良の疾患だ。

 この疾患では、初期には間歇性跛行が認められ、虚血が進行すると安静時痛と足部に壊疽を認められるようになる。早期発見、早期治療が重要で、手遅れになると大腿部や下腿部での切断となり歩行が困難になる。

 歩行困難になった結果、「日常生活動作」(ADL)が低下し、廃用性の筋力低下が起こる。いずれ寝たきりになり、透析クリニックへの通院も困難になる。そのため早期にCLIを発見し、血行再建が可能な病院へ紹介し、歩行を維持していくことが重要になる。

下肢切断を防ぐためのフットケア 「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」の影響は大きい

 2016年度診療報酬改定で、すべての人工透析患者の足を透析クリニックが日頃からチェックし、重症度の高い虚血がみられる患者をスクリーニングして、末梢動脈疾患を抽出し、下肢救済を行う専門病院へ紹介すると、算定が可能となる「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設された。

 この加算は、人工透析患者で下肢の虚血が疑われる場合に、追加で足関節上腕血圧比(ABI)検査または皮膚灌流圧(SPP)検査を行って、血流が悪い患者については、連携を組んでいる施設に紹介することで100点が算定できるというもの。

 一般的にフットケアというと、爪切り、胼胝けずり、足浴・保湿をイメージする医療従事者もいるが、それだけでは透析患者の足を救うことはできない。

 重要なことは、足を観察し何が起こっているのかを、特に血流に関して評価すること、さらには、適切な治療が行える病院へ「紹介する」こと(連携)だ。この加算は、重症下肢虚血を早期発見するための医療制度として画期的だ。

 下肢救済加算が新設されたこともあり、透析患者の足を守る意識は浸透しており、透析クリニックでもフットケアを行う施設が増えている。

 今年6月に神戸で開催された第63回日本透析医学会学術集会(会長:中西健・兵庫医科大学内科学腎・透析科教授)でも、下肢切断を防ぐためのフットケアについての演題に注目が集まり、関心の高さが示された。

下肢救済加算を活用している施設は全透析施設の76.6%

 一般社団法人「Act Against Amputation」(AAA、代表理事:大浦紀彦・杏林大学医学部付属病院形成外科教授、日本下肢救済足病学会理事)の調査で、この加算を活用している透析施設数は、2018年4月時点で、全国の全透析施設の76.6%に及んでいることが明らかになった。

 AAAは、日本透析医学会施設会員名簿(2017年度)に登録された4,026施設を対象に、各都道府県の普及率を算出した。その結果、全透析施設の76.6%(3,087施設)が申請を行い、制度を活用していることが判明した。2016年4月の34.3%から2倍以上に上昇し、申請施設数と普及率は着実に増加している。

 都道府県別に、日本透析医学会施設会員名簿からみた比率を比べると、届出率の高い上位5県は、(1)徳島県(100.0%)、(2)大分県(100.0%)、(3)兵庫県(96.4%)、(4)三重県(88.9%)、(5)愛媛県(87.5%)だった。

 「透析患者の重症下肢虚血(CLI)において重要なことは、早期発見・早期治療です。この制度が浸透し、連携施設で治療する患者が増えれば、今までは手遅れだった症例を助けられるようになります。透析患者の重症下肢虚血に対する取り組みが加速すれば、患者の生命予後やQOL向上につながります。AAAは、CLIの重症化予防による透析患者さんの足を守る活動を継続的に行っていきます。さらに地域で活躍する医療従事者の現場の状況をご紹介し、医療者のモチベーションを高める活動も行う予定です」と、大浦氏は述べている。


一般社団法人 Act Against Amputation(AAA)
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