人道的危機にさらされる糖尿病患者のケアに取り組む連携 赤十字社とノボ ノルディスク
2018.04.25
赤十字国際委員会(ICRC)、デンマーク赤十字社(DRC)、およびノボ ノルディスクは、世界中の人道的危機にある何百万の人々の中で急激に増加している慢性疾患の問題に取り組むための連携を結ぶことを発表した。
武力衝突が起こっている地域ではNCDは見過ごされている
現在、慢性的な非感染性疾患(NCD)に罹患している人は、感染性疾患の患者数を超えている。しかし、医療資源はこの状況をふまえておらず、人道的危機にある地域は深刻な状態にある。 現在、紛争からの避難者は6,500万人を超えている。人道主義者や保健衛生の活動家たちは、負傷や感染症など、人々が直面する急性の健康脅威に歴史的に取り組んできた。しかし、緊急援助を必要とする強制移住した人々や彼らのコミュニティーでは、保健衛生へのニーズははるかに大きい。 人道的危機にある人々の糖尿病や高血圧といった慢性疾患が悪化するリスクは、人道的危機に見舞われる以前に比べて、2~3倍に高まる。イエメン、シリアおよびイラクにあるICRC身体リハビリテーションセンターでは、外科的に患者の四肢のひとつを切断する必要が生じる原因の1つが糖尿病であるとみている。 「NCDはサイレントキラーであり、武力衝突が起こっている間は見過ごされることがよくあります。人々は自らの健康状態を維持改善するために、適切な保健インフラや医薬品を必要としています。イエメン、シリアおよびイラクなどでは、もしインスリンなどの必須医薬品が供給されなければ、何千もの糖尿病患者が生命を脅かされる状況になるでしょう」と、ICRC総裁であるペーター マウラー氏は述べている。インスリンの低価格かつ効率的な供給を確保
連携は、次の3つから構成されている。最終的にNCDを患う数百万もの弱い立場に置かれた人々の緊急的なニーズを満たすための新境地を切り開くことを目指すという。 世界中の赤十字社の活動に対し、バイアルインスリンの低価格かつ効率的な供給を確保する
ICRCおよびDRCによるNCDの予防および治療の改善を図る等の保健プログラムに対し、ノボ ノルディスクが支援する
人道的危機にある高血圧や糖尿病の患者に対し、3年以内に2~3のプロジェクトを実施する 「私たち3団体は、それぞれの専門分野を組み合わせた探索的な連携を通じ、保健分野におけるアンメットニーズに献身的に取り組んでいきます」と、ノボ ノルディスクCEOであるラース フルアーガー ヨルゲンセン氏は述べている。 「この連携は、人道的危機にあるNCDを患う全ての人々が治療にアクセスできるようになる、という私たち全員の強い思いを実現する第一歩なのです」と、デンマーク赤十字社の事務総長であるアナス ラデカール氏は付け加えている。 確実なデータ収集とエビデンス構築を確実にするため、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院 人道危機衛生センターと協力し、同センター長であるカール ブランチェット氏を本連携の主任学術パートナーとする。
武力衝突の危険がある地域に暮らす人々への医療提供を促進
この連携において、各パートナーは、次の方法で貢献していく。 ICRCは、特に不安定で武力衝突の危険がある地域に暮らす弱い立場の人々への医療提供において、これまでの人道支援活動およびその専門知識を用いて貢献していく。DRCとともにICRCは、ICRCが支援する既存の保健施設を通じて糖尿病や高血圧の治療を必要とする人々の特定を含め、実証プロジェクトの実施の指揮を現場でとる。 DRCは、慢性疾患の予防および管理に焦点を置き、人道的危機にある地域の保健支援活動およびその能力強化に関する知識を用いて貢献していく。これにより、市民社会グループの全国的なネットワークへのアクセスが可能となり、特定の現地の状況に関連したサービスを提供することが容易になる。また、医療従事者も含め人道援助活動およびその対応に関する豊富な経験を有するスタッフやボランティアを動員することができる。 ノボ ノルディスクは、保冷が必要な医薬品の取り扱いと流通に関する知識を共有し、発注から生産までの手順を調整していく。また人道支援における糖尿病の予防や治療に関する教育資材の開発支援など、糖尿病ケアへのアクセスを拡大するための能力強化に関する豊富な経験を共有していく。本連携への資金援助額は、2千150万デンマーククローネになる。 Red Cross and Novo Nordisk announce ground-breaking partnership to tackle chronic care in humanitarian crises(ノボ ノルディスク 2018年4月18日)[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]