「ジャディアンス」が末梢動脈疾患を合併した成人2型糖尿病患者の心血管死リスクを減少
2017.11.27
「ジャディアンス」(一般名:エンパグリフロジン)は、末梢動脈疾患を合併した2型糖尿病患者で、プラセボと比較して心血管死のリスクを43%低下させたことが、EMPA-REG OUTCOME試験で明らかになった。切断のリスクが高い患者集団においても、ジャディアンスを用いた治療により、下肢切断のリスクは上昇しなかった。
ジャディアンス投与群で心血管死のリスクは43%減少
末梢動脈疾患を合併した成人2型糖尿病患者において、標準治療に「ジャディアンス」を上乗せ投与した結果、プラセボ群と比較して、心血管死のリスクが減少することが新たに示された。 EMPA-REG OUTCOME試験の事後解析に基づいたこれらの結果は、米国カリフォルニア州アナハイムで開催されたアメリカ心臓協会(AHA)2017で、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーにより発表され、同時にAHAの学会誌である「Circulation」のオンライン版に掲載された。 50歳以上の糖尿病患者の約3人に1人が、脂肪性沈着物の蓄積により、通常、上下肢に繋がる動脈が狭くなる末梢動脈疾患を抱えている。末梢動脈疾患は、高度に血流が制限されると四肢の障害を惹起し致命的な状況に至ることに加えて、生命活動に必須な心臓、腎臓、脳などの臓器の傷害と関連している。 この末梢動脈疾患について適切に管理しなければ、上下肢の切断、さらには入院、身体障害、死亡に至る可能性がある。 「EMPA-REG OUTCOME」試験では、その開始時点で、被験者7,000名以上のうち21%に末梢動脈疾患の既往があった。この患者集団の解析により、標準治療に上乗せしたジャディアンス群では、プラセボ群と比較して以下の事実が示された。 心血管死のリスクは43%減少した。 総死亡は38%減少、心不全による入院は44%減少した。
心血管死、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中の主要複合評価項目のリスクは16%減少した。
腎症の悪化もしくは初回発現の複合評価項目は46%減少した。
ジャディアンス投与群で下肢切断のリスクは上昇せず
末梢動脈疾患を合併する患者における心血管および腎臓への影響は、「EMPA-REG OUTCOME」試験における全体集団の結果と一致していた副作用および重篤な副作用の発生率は、ベースライン時の末梢動脈疾患の有無に関わらず、成人患者においてジャディアンス群とプラセボ群で同等だった。 末梢動脈疾患を有する患者で、下肢切断率はジャディアンス投与群で5.5%、プラセボ投与群で6.3%だった。末梢動脈疾患のない患者では、下肢切断率はジャディアンス投与群で0.9%、プラセボ投与群で0.7%だった。 「2型糖尿病における心血管合併症としてもっとも一般的な疾患の1つである末梢動脈疾患では、心血管死のリスクが高まる。末梢動脈疾患を合併している2型糖尿病患者の心血管関連のアウトカムを改善できる治療選択肢が早急に求められている」と、セント・マイケル病院の心臓外科医でトロント大学教授のサボド・ベルマ医学博士は言う。 「ジャディアンスが2型糖尿病と末梢動脈疾患を合併している非常に心血管リスクの高い患者集団において、心血管死および腎疾患のリスクを減少することが示された」と、ベーリンガーインゲルハイムのコーポレート・シニア・バイスプレジデント、心血管代謝領域部長ジョージ・ヴァン・フーゼン氏は言う。 ジャディアンスは、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害剤。欧州および米国をはじめ、世界各国で成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されている。 なお、日本におけるジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管死および腎疾患のリスク減少に関連する効能・効果は取得していない。 日本ベーリンガーインゲルハイム日本イーライリリー
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]