増殖糖尿病網膜症に対する「エミクススタト塩酸塩」の臨床第2相試験 網膜の低酸素状態を抑制
2017.11.27
窪田製薬ホールディングスは、米国の子会社アキュセラ・インクが実施中の、増殖糖尿病網膜症の治療での「エミクススタト塩酸塩」(エミクススタト)の効果を評価するための臨床第2相試験で、最終被験者の最後の来院(LPLV、Last Patient Last Visit)を終えたと公表した。
エミクススタトが視覚サイクルを調節 網膜の低酸素状態を抑制
同試験は、多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験であり、増殖糖尿病網膜症の患者18名を対象に2016年4月より米国で実施されている。被験者は、エミクススタトあるいはプラセボを1日1回、12週間にわたり経口投与され、エミクススタト投与群では、5mgから40mgへの漸増試験を行った。評価項目には、増殖糖尿病網膜症に関連するバイオマーカーの変化と、網膜出血や血管新生、視力への効果が含まれる。 増殖糖尿病網膜症では、慢性的な高血糖により血流が悪くなり、網膜が低酸素状態になり、病的な血管新生を引き起こしたり、眼底出血が生じる。血管新生は視力喪失につながる。 網膜には、脳に映像を認識させるために光を電気信号に変える働きをする「視覚サイクル」と呼ばれる仕組みがある。視覚サイクルの不可欠な酵素としてRPE65と呼ばれる分子内反応を触媒する異性化酵素がある。エミクススタトは、RPE65に特異的に作用し、その働きを抑制する。これにより、網膜疾患の原因と考えられているビタミンA由来の毒性代謝産物の生成や網膜が低酸素状態になるのを防ぐことが期待される。増殖糖尿病網膜症以外の適応拡大も視野に
暗環境下で酸素消費量を軽減させるというエミクススタトの効果は非臨床試験にて示されている。既存の硝子体内注射などの侵襲的な治療法とは異なり経口投与であるため、エミクススタトは糖尿病網膜症の治療においてパラダイムシフトをもたらす可能性がある。 増殖糖尿病網膜症は、世界中で1,900万人超が罹患しており、2020年までには約2,200万人に達すると予想されている。糖尿病網膜症罹患者数は世界で1億500万人とされており、これは糖尿病有病者数4億1,500万人の25%以上に相当する。 糖尿病網膜症は、単純期、前増殖期、増殖期へと進行する。このほどエミクススタトによる臨床第2相試験を実施した対象疾患は、重度である増殖糖尿病網膜症。 同社は、重度である増殖糖尿病網膜症のほか、将来的には、前増殖糖尿病網膜症、単純糖尿病網膜症、合併症である糖尿病黄斑浮腫への適応拡大を視野に入れている。 窪田製薬ホールディングス[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]