東京地域に特化した新しい 東京CDE と 東京CDS
東京糖尿病療養指導士(東京CDE)と、東京糖尿病療養支援士(東京CDS)は、2017年3月に発足した、東京地域に特化した新しい認定資格だ。
糖尿病療養指導士(CDE)は、糖尿病治療にもっとも大切な自己管理(療養)を患者に指導する医療スタッフで、高度で幅広い専門知識をもち、患者の糖尿病セルフケアを支援することを目的とした専門資格。全国版としては、日本糖尿病療養指導士(CDEJ)がある。
東京糖尿病療養指導士(東京CDE)と、東京糖尿病療養支援士(東京CDS)は、東京都及び近県における糖尿病患者とその予備群の増加に対応し、糖尿病患者に対するより良い医療、糖尿病予備群の方に対する適切なサポートが行われるよう、糖尿病の病態、療養に関する知識を有する幅広い分野の専門職となる。
■ 東京糖尿病療養指導士(東京CDE) |
主として医療現場における糖尿病患者の指導にあたる専門職で、糖尿病の病態、治療等に関する高度な知識を習得し、認定試験に合格した医療職等有資格者。 |
■ 東京糖尿病療養支援士(東京CDS) |
主として健康増進・発症予防や福祉、介護などの幅広い職域において、糖尿病予備群や一般生活者を対象に、糖尿病の知識の啓発と予防にあたる専門職で、糖尿病の病態、治療等に関する一定レベルの知識を習得し、認定試験に合格した専門職有資格者。 |
2つの資格について、都内および都内近郊に勤務、在住の以下の専門職が資格を取得できる。有資格者数は東京都だけで約52万人以上に上る。
10月に認定試験を実施する予定
資格取得者のメリットは以下の通り。
1. | 糖尿病の病態と療養に関する体系的な知識が修得できる。 |
2. | 糖尿病の治療と療養に関する知識を修得していることが、専門資格として認定される。 |
3. | 職域において、糖尿病の専門資格取得者(エキスパート)として認められる。 |
4. | 指導対象者から、糖尿病の専門職としての信頼が得られ、指導に自信が持てる。 |
5. | 職域に認定資格者がいることで、糖尿病や予備群への対応が、安心して任せられる。 |
新年度の資格取得までの流れは、今年8月・9月に受験者用研修会が実施され、10月に認定試験が実施される予定。最新の情報は、2つの資格のそれぞれのホームページに掲載される。
糖尿病合併症を抑制するために治療の早期開始を
「日本には、2014年の国民健康・栄養調査で2050万人の糖尿病患者さんと予備群がおり、そしてその1割が東京在住になります。この方々が糖尿病の発症をしないよう、また重症化を予防できるよう、この資格を通じて身近な人たちに糖尿病を理解、勉強していただくため、今回の発足となりました。この会が順調に発展し、社会で機能するため、ご協力をお願いします」と、東京糖尿病療養指導推進機構代表理事の本田正志氏は述べた。
東京都では糖尿病有病者数が増えている。糖尿病の適切な治療を受けないでいると、深刻な合併症が引き起こされ、患者の生活の質(QOL)が著しく低下する。通院して治療を受けていない人が多いことが、問題をより深刻にしている。
東京都の糖尿病が強く疑われる者の割合は、男性20.3%、女性16.3%で、全国平均の男性15.5%、女性9.8%を上回っている(2014年東京都民の健康・栄養状況)。
糖尿病合併症である網膜症は失明の原因の第2位になっており、東京都では年間に153人が失明している(2014年)。また、糖尿病腎症は人工透析の導入の原因となる疾患の第1位で、東京都では年間に1,534人が新規に糖尿病導入に至っている。また、東京都の透析患者数は3万人を超えており、全国でもっとも多い。
糖尿病は認知症のリスクも高める。糖負荷試験の2時間値が200mg/dLを超えていると、アルツハイマー病の相対危険度が3.4倍に、140mg/dL以上200mg/dL未満でも1.8倍に高まるという調査結果がある(Neurology, 2011, 77(12), 1126)。
高齢者が要介護になる原因となる疾患は、男性では脳卒中(28.4%)、認知症(13.3%)、心臓病(4.7%)などが、女性では脳卒中(13.3%)、認知症(17.1%)、心疾患(4.4%)などが、それぞれ上位を占めている(国民生活基礎調査)。これらは糖尿病とも関連が深い疾患だ。
糖尿病の医療費の高騰も医療財政を圧迫させる要因になる。糖尿病合併症の数が増えるほど医療費は高くなる。医療経済研究機構の報告によると、合併症がまったくない場合に比べ、合併症が4つ以上重なると、医療費が2.5倍近くまで膨れ上がる。また、腎症が進行し、透析治療が必要になると1人年間500万円以上の医療費がかかる。
幅広い職域で糖尿病の未治療例にも対応
これらの合併症の多くは、糖尿病を早期発見し、適切な治療を行うことで、予防が可能だ。そのために、糖尿病の療養に対応する専門職の底上げをはかると同時に、幅広い職域で糖尿病の知識を持った人材を増やすことが求められている。
糖尿病有病者のうち、治療を受けていないか中断してしまった人は34.8%に上る(国民健康・栄養調査)。そうした未治療例に介入するために、地域ぐるみのサポートが重要となる。
糖尿病の外来患者のうち、病院に通院している割合は35%、診療所に通院している割合は65%(患者調査)。そうした医療機関の医師や看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士など医療専門職の力だけでは、未治療例への十分な対策を行えない。
そこで、東京都糖尿病療養指導士の認定制度では支援士まで範囲を広げ、専門職有資格者の加入を呼びかけている。健診機関、健保組合などの保健師、管理栄養士など、護施設などのケアマネージャー、社会福祉士など、薬局やドラッグストアなどの薬剤師、登録販売者など、行政・地域の自治体職員などが力を合わせて、糖尿病療養を高めていくことを求めている。
東京糖尿病療養指導士認定機構と東京糖尿病療養指導推進機構は、糖尿病に関わる医療職、専門職の研修を行い、糖尿病に関する知識の修得を認定することで、糖尿病患者さんとその予備群を支える層の厚い社会インフラを構築するために2017年3月に設立された。
「幅広い分野の医療職、専門職に、それぞれの職域で、糖尿病の病態と療養に関する知識とスキルを向上していただくと、糖尿病患者の療養を支援し、予備群をサポートするために大きな力になる」と、東京糖尿病療養指導士認定機構代表幹事の菅原正弘氏は述べている。
また、最後に内潟安子氏より東京糖尿病療養指導士、東京糖尿病療養支援士の説明があり、「医療機関に患者さんの疑問に答えられる東京CDEがいると、患者さんにとっては大きな力になる。また、東京CDSが適切なアドバイスをして医療機関の受診につなげられるとメリットが大きい」と、東京糖尿病療養指導士認定機構事務局長の内潟安子氏は述べた。
患者の自宅を医師などが訪れて診療する「在宅医療」も増えており、糖尿病患者を診療するケースが増えている。地域の多職種がチームとなって糖尿病の在宅患者をサポートするなかで、医師や看護師、管理栄養士などがチーム医療を展開するケースが多い。そのなかに、東京CDEや東京CDSの資格をもつスタッフがいれば、継続した治療と血糖コントロールを行いやすくなる。
東京CDSは、介護支援専門員や介護福祉士、社会福祉士も取得できる。介護の現場で、糖尿病について良く知っているスタッフによる毎日の気づかいがあるだけで、糖尿病患者にとっては大きな助けになる。