インスリン療法を勧めると抵抗感を示す2型糖尿病患者 治療開始のポイントは 日本イーライリリー調査
2016.11.14
「インスリン療法は重症になってからの治療法」と考える患者は少なくない。インスリン療法を早期に開始することで、多くの患者が目標の血糖値に到達できるが、インスリン療法に対して抵抗感を抱く患者は依然として多い。
日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムが実施した調査で、インスリン療法を開始した患者の多くは治療に対して前向きであることが明らかになった。
日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムが実施した調査で、インスリン療法を開始した患者の多くは治療に対して前向きであることが明らかになった。
医師からインスリン療法を勧められても抵抗感をもつ患者が多い
糖尿病のインスリン療法は、患者による自己注射が大きな比重を占める。そのため、患者の心理的な負担が大きい。日本イーライリリーは、患者と医師の双方のインスリン療法に対する意識・実態調査を行った。 調査は2016年8月に、2型糖尿病患者さんを対象にインスリン治療を行っている医師173人、説明を受けたことはあるがインスリン治療を開始していない2型糖尿病患者148人、インスリン治療開始から1年以内の2型糖尿病患者50人を対象に実施された。 調査結果から、医師が患者に療法変更を伝える際のためらいが浮き彫りになった一方で、療法を変更した患者は「HbA1c値の改善」「経口薬より高い効果」などを期待しており、治療に対して前向きであることが示された。 日本イーライリリーが発表した主な調査結果は以下の通り――
・ 医師からインスリン治療に関する説明を受けたもののインスリン未治療の患者の89.2%が、インスリン治療について「わざわざインスリンを始めなくても、今の治療のままで大丈夫」と認識していることが明らかになった。
・ インスリン治療中の患者では「相談してみたいと思ったことがある」と回答した患者が54.0%に上り、インスリン治療前の患者に比べて相談意向が高い。
・ 医師の97.2%が「インスリン治療が必要な段階にきている」ことを患者に説明しており、他にも「合併症が起きたり、さらに悪くなることを防ぐ」(93.6%)、「経口薬より血糖値が下がる」(89.1%)が上位を占めた。
・ インスリン治療中の患者にインスリンに切り替えた理由を尋ねたところ、「HbA1cの値を改善したかった」(68.0%)、「経口薬では十分な治療効果が得られなかった」(58.0%)、「経口薬より高い効果が期待できた」(54.0%)という回答が多く、治療に対し前向きに考えていることが分かった。
・ 医師が患者にインスリン治療を提案する際に困ることの1位は、患者が「インスリン治療の必要性を理解してくれない」(59.5%)だった。医師側からの説明は十分にされている一方で、患者の理解をなかなか得られない現状が浮き彫りになった。
・ 医師が考えるインスリン治療の開始がうまくいく2型糖尿病患者の共通点は「治療への意欲が高い」(20.8%)、「理解力がある」(17.9%)、「病識がある」(16.2%)だった。
インスリン療法を開始した患者は前向きのイメージをもっている
米国糖尿病学会(ADA)や欧州糖尿病学会(EASD)は、インスリン治療を早期に糖尿病治療に組み込むことを推奨している。早期のインスリン導入が効果的であることを示した研究も増えている。 日本イーライリリーの調査結果について、奈良県立医科大学糖尿病学講座の石井均教授は都内で開催されたセミナーで「2型糖尿病は進行する疾患。血糖コントロールを改善するために、インスリン療法が必要となる患者は多い。インスリンを早くはじめるほど、目標の血糖値に迅速かつ確実に到達できるという報告がある*」と述べている。 一方で、インスリン療法に対する抵抗感を抱く患者も多い。「インスリン療法を勧められた患者の70~85%が抵抗感を抱く。一方で、インスリン療法を実際に開始した患者の多くは、治療に対して正のイメージをもち、満足度も高い。患者双方の心理的抵抗感やギャップを改善することで、より良い治療を行うことができる可能性が高い」と、石井均教授は言う。 石井教授は医師や医療スタッフに対して「辛抱強く説明をしていけば、患者の気持ちは変化していく。あきらめずに説明を続けることが大切だ」と説く。「インスリン治療を適切な時期に開始するためには、医師側の心理的抵抗を克服する必要もある」と、石井教授は言う。インスリン導入に抵抗のある患者とのコミュニケーションをサポート
前向き! インスリン グラルギンBS注「リリー」(日本イーライリリー) * Increasing Patient Acceptance and Adherence Toward Insulin(Postgraduate Medicine、2016年)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]