ビクトーザが2型糖尿病患者の腎障害の進行を抑制 顕性アルブミン尿の新規発症を抑える

2016.09.29
第52回欧州糖尿病学会(EASD)

 ノボ ノルディスクは、心血管イベントの発生リスクの高い2型糖尿病患者を対象に、GLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」(一般名:リラグルチド)を標準治療に追加投与すると、有意に腎障害の進行を抑制されることを示した「LEADER試験」の結果を発表した。

ビクトーザが腎障害の進行を抑制

 ノボ ノルディスクは、心血管イベントの発生リスクの高い成人2型糖尿病患者9,340人を対象に、ビクトーザを標準治療に追加投与して、尿中アルブミン/クレアチニン比で評価した結果、プラセボと比較して統計学的に有意に腎障害の進行を抑制したことを発表した。

 いずれのサブグループ(腎障害:なし、軽度または中等度)でも同様に、ビクトーザ群はプラセボ群と比較して有意な差を示した。腎障害は、顕性アルブミン尿の発現、血清クレアチニン値の倍化、持続的腎代替療法の導入、腎障害による死亡の複合腎障害アウトカムで評価された。

 腎障害の新規発症あるいは悪化は、大規模臨床試験であるLEADER心血管アウトカム試験のセカンダリーエンドポイントだった。顕性アルブミン尿の新規発症は、プラセボ群と比較してビクトーザ群で統計学的に有意に抑制されており(26%)、このことが、全体の腎障害リスクを22%低下させた主な要因となった。

 「LEADER試験」から得られた結果は、ミュンヘンで9月に開催された第52回欧州糖尿病学会(EASD)年次学術集会で発表された。

心血管イベントリスクを低下 入院リスクも低下

 「LEADER試験」はビクトーザ(最大1.8mg*のリラグルチド)の長期(3.5~5年間)投与による影響を検討する多施設、国際共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験であり、主要な心血管イベントの発生リスクの高い2型糖尿病患者に対してビクトーザあるいはプラセボを標準治療に追加投与した。標準治療は生活習慣の改善、血糖降下薬および心血管系治療薬で構成された。
(*日本で承認されている用量とは異なる。)

 LEADER試験は2010年9月に開始され、32ヵ国から9,340人の2型糖尿病患者が参加。主要エンドポイントは心血管死、非致死性心筋梗塞(心臓発作)または非致死性脳卒中のいずれかが最初に発現するまでの時間と定められた。

 3.8年(中央値)の観察期間中、ビクトーザはプラセボと比較して、複合主要エンドポイントである心血管死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中のリスクを、有意に13%低下させた。プラセボと比較して、ビクトーザを使った治療では、心血管イベントによる死亡を統計学的に有意に22%低下させ、また、有意差は示されなかったものの非致死性心筋梗塞および非致死性脳卒中の低下も認められた。

 さらに、セカンダリーアウトカムである心不全による入院に対した解析した結果、2型糖尿病かつ心不全の既往歴がある成人において、ビクトーザはプラセボと比較して入院のリスクを高めなかった。あらかじめ定められたセカンダリーアウトカムの解析の結果では、ベースライン時における心不全の既往歴の有無にかかわらず、すべての成人で、ビクトーザはプラセボと比較して心不全による入院のリスクを13%低下させた。

 有害事象を発現した成人の割合は、ビクトーザ群で62.3%、プラセボ群で60.8%と同様だった。ビクトーザの投与中止に至った最も頻度の高い有害事象は、胃腸障害だった。膵炎の発現率はプラセボ群と比較してビクトーザ群で低い結果だったが、統計学的な有意差は認められなかった。

腎障害リスクを抑制する新たな治療

 「糖尿病は、末期腎不全の主因である糖尿病腎症の発症リスクを有意に高める。糖尿病腎症は糖尿病患者の30~40%にみられ、心血管疾患の重大なリスク因子として知られる。今回の試験の結果は、ビクトーザが心血管イベントの発生リスクの高い成人2型糖尿病患者において腎障害リスクを抑制する可能性を有することを示唆しており、臨床的に重要だ」と、LEADER試験の治験医師であるヨハネス マン エアランゲン・ニュルンベルク大学医学部腎臓・高血圧内科教授は述べている。

 GLP-1アナログである「ビクトーザ」(リラグルチド)は、2009年にEUで承認され、現在85ヵ国以上で販売、100万人以上の2型糖尿病患者の治療に使用されている。欧州では、成人2型糖尿病患者の血糖コントロール改善のため、メトホルミンでは不十分な場合、単独療法、もしくは食事・運動療法に加えて経口血糖降下薬ならびに/またはベーサルインスリンの投与でも効果が不十分な場合の併用療法が認められている。

Liraglutide and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes(New England Journal of Medicine 2016年8月3日)
Diabetic nephropathy: where are we on the journey from pathophysiology to treatment?(Diabetes, Obesity and Metabolism 2016年2月11日)
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