糖尿病患者の足を守るために内科医がやるべきこと、できること
糖尿病合併症の話題を集約した「Diabetic Complication Topics」は、第2回「糖尿病患者の足を守るために内科医がやるべきこと、できること」を公開しました。今回は、糖尿病足病変をテーマに、富田 益臣 先生(下北沢病院 糖尿病センター長)にお伺いします。「Diabetic Complication Topics」へ ▶
Diabetic Complication Topics 第2回(本文より)
「糖尿病患者の足を守るために内科医がやるべきこと、できること」
糖尿病患者の足病変は容易に進行し切断リスクが高い。しかしその統計的な実態は明らかでなく、切断が増加しているのか減少しているのかも明らかでない。なぜなら、足病変の治療において中心となる診療科がないことから、患者がさまざまな医療機関に分散しているためだ。このような現状を改善し「患者の足を守ろう」とする取り組みが今、各地で始まっている。新たに構築されていく下肢診療システムの中で、内科医はどのような立ち位置でかかわるべきなのか。東京都済生会中央病院で長年、下肢診療に携わり、下北沢病院糖尿病センターの開設とともにそのセンター長に就任された富田益臣氏に伺った。
救肢の外科的治療は進歩してきたが、
内科が主体となる予防的治療の普及は今一歩
──糖尿病患者さんの下肢切断は増えているのでしょうか?
富田先生 海外からは膝や股関節での大切断が減っているという報告がありますが、国内にはほとんどデータがありません。その理由として、国内には足を専門に診る診療科がないために、患者さんがさまざまな科に分散していることが挙げられます。ただ、糖尿病に関しては2008年に予防的フットケアの診療報酬(糖尿病合併症管理料)が新設されて各地にフットケア外来が立ち上がり、患者さんが集約されてきています。ようやく現状を把握できる環境が整いつつあり、下肢診療の質を向上させるための第一段階と言ったところだと思います。
──海外で大切断が減っているというのは、治療の進歩によるものですか?
もちろん治療の進歩もありますが、予防対策が行き届いてきたことも寄与していると思います。国内でもこの数年で救肢医療が急速に進歩していますが、予防についてはまだ心もとないように感じています。
数年前に当時の勤務先施設で糖尿病・内分泌内科の各医師が、日常診療でどのような検査・診察を行っているか調べたことがあります。その結果、HbA1cや血圧などはガイドラインの推奨値を概ね達成しており、定期的な眼科検査も約7割の患者さんに行われていたのですが、下肢の診察はわずか5.3%の患者さんにしか行っていないことがわかりました。ちなみに米国は68%に達しており、これをさらにアップさせるべく国家的目標が掲げられています。