インスリンとリラグルチドの併用で血糖コントロールが有意に改善

2016.07.08
 インスリン強化療法で大量のインスリンを投与されているのにもかかわらず血糖コントロールが改善しない患者において、GLP-1受容体作動薬「リラグルチド」の併用が効果的であるという知見を、テキサス大学サウスウエスタン医療センターが発表した。

リラグルチドはインスリン大量投与例の血糖コントロールを改善する

 GLP-1受容体作動薬「リラグルチド」はインスリン分泌作用を増やし、空腹感を低減し、グルカゴン分泌作用を減少させる。インスリンとグルカゴンは相反する作用をし、膵β細胞から分泌されるインスリンは血糖値を下げ、α細胞から分泌されるグルカゴンは血糖値を上げる。

 テキサス大学サウスウエスタン医療センター内科・臨床科学のIldiko Lingvay準教授は、高容量インスリン投与によって血糖コントロールが改善しない患者に対しリラグルチドを併用投与する試験をデザインした。

 「インスリン療法を行っている患者の多くで体重増加がみられる。体重増加により必要インスリン量が増え、さらに体重増加に陥り血糖コントロールが改善しない患者が多い。我々はリラグルチドを併用療法によりこの悪循環を断ち切れるのではないかと考えた」と、Lingvay氏は言う。

 試験には1日4~5回のインスリン頻回注射を行い、HbA1c値が7.5%以上で過体重の2型糖尿病患者71名が登録された。プラセボ対照二重盲ランダム比較試験(RCT)として行われ、結果はリラグルチドを投与された群でHbA1c値が8.9%から8%まで低下したが、プラセボ群では変化しなかった。

 体重は、リラグルチド群では平均2kg(4.5ポンド)減少したが、プラセボ群では微増した。

 「インスリン治療を行っていない患者にリラグルチドを投与した場合に比べ改善は少なかったが、治療困難例にとっては大きな改善だ」と、Lingvay氏は言う。

 19歳の2型糖尿病患者であるAmy Sweatさんは、外科手術の回復期に糖尿病と診断された。ただちに経口薬による治療が開始されたが、血糖コントロールは改善せずインスリン療法に切り換えられた。それでもHbA1c値は常に高く目標値を達成できなかった。

 二重盲検試験だったが、数週間で血糖コントロールが顕著に改善したことから、Sweatさんは「自分がリラグルチド群に振り分けられたと確信した。糖尿病と診断された時から常に血糖値は高かったが、今回の治験に参加してはじめて血糖コントロールが目標まで改善し、体重も低下した。今後はリラグルチドによる治療を継続したいと希望している」と語っている。

 「当初は慢性疾患のある患者では残存するβ細胞がわずかであり、リラグルチドの作用はグルカゴンの抑制によるものと思われていた。しかし実際には、リラグルチドがインスリン分泌作用を改善することを通じて、血糖降下作用を及ぼすことに我々は気が付いた」と、Lingvay氏は指摘している。

Liraglutide reduces blood sugars in patients taking large amounts of insulin(テキサス大学サウスウエスタン医療センター 2016年7月6日)
Effect of Adding Liraglutide vs Placebo to a High-Dose lnsulin Regimen in Patients With Type 2 Diabetes.
JAMA Intern Med. 2016;176(7):939-947. doi:10.1001/jamainternmed.2016.1540.
Mechanisms of Action of Liraglutide in Patients With Type 2 Diabetes Treated With High-Dose Insulin.
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2016; 101 (4): 1798 DOI: 10.1210/jc.2015-3906.

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