SGLT2阻害薬「ジャディアンス錠」が心血管リスクおよび心血管死を減少 糖尿病治療薬ではじめて
2015.10.01
心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬「ジャディアンス錠」(一般名:エンパグリフロジン)を標準治療に上乗せしたところ、主要評価項目である複合心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクが14%有意に減少したとの試験結果が発表された。結果は第51回欧州糖尿病学会(EASD)で発表され、「New England Journal of Medicine」にも発表された。
エンパグリフロジン投与により3人に1人の割合で心血管死を防止
「EMPA-REG OUTCOME」試験は、世界42ヵ国、7,000人以上が参加した長期の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者。この試験の追跡期間中央値は3.1年で、その間にみられた主要評価項目イベントは772件だった。 同試験では、標準治療に上乗せした場合のジャディアンス錠(10 mgまたは25 mg、1日1回投与)の効果をプラセボと比較して評価した。主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のいずれかの初回発現までの期間。同試験の解析は、非劣性を検定した後に優越性を検定するようデザインされていた。標準治療は、血糖降下薬よび心血管薬(降圧薬、コレステロール降下薬など)だった。 治療を受けた患者7,020人のうち、97%以上が試験を完了し、試験終了時にはこれらの患者の99%について生命状態が判明していました。解析および結果は、ドイツのフライブルク大学が独立的にバリデーションおよび検証を行った。 その結果、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中のリスクに関して有意な変化はみられませんでしたが、心血管死については38%の減少がみられました。さらに、ジャディアンス錠を投与することで、総死亡のリスクは32%、心不全による入院リスクは35%低下した。 心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者の寿命は平均で最大12年短くなっており、その死亡の約50%が心血管疾患によるものだ。同試験では、ジャディアンス錠の効果を標準治療に上乗せして観察している。つまり、糖尿病や心血管疾患の治療のために患者がすでに使用している他の治療薬(降圧薬、コレステロール降下薬など)に追加投与した場合に、ジャディアンス錠のベネフィットが確認されたということになる。 「死亡を含む心血管イベントの発症に対応することは糖尿病治療の中核となっていますが、これまでに1剤で死亡リスクを減少させる結果を示した糖尿病治療薬はなかった。今回の試験ではエンパグリフロジンの投与により3人に1人の割合で心血管死を防いだことが明らかになった」と、バーナード ジンマン・トロント大学医学部教授は述べている。 「この試験に参加した患者は、すでに心血管イベント減少が証明されている他の治療薬を使用していた。これらの治療薬にエンパグリフロジンを追加投与するかたちで更なる心血管死の減少を示した今回の結果は非常に重要だ」と、クリストファー P キャノン・ハーバード大学医学部教授は述べている。 なお、現時点ではジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントの発現リスク減少に関連する効能・効果は取得していない。 Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2015年9月17日)[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]