働きながら治療を続けるために 合併症が心配な患者の療養を支える糖尿病治療
2015.09.08
日本イーライリリーは、働きながら経口薬のみで治療する2型糖尿病患者のうち「半数近くの糖尿病患者が処方されている薬を指示通り飲めていない」という調査結果を発表した。
患者の主体的な参加が治療の成否に深く関わっているが、患者が自己管理をするのが難しい現状が浮き彫りになった。
患者の主体的な参加が治療の成否に深く関わっているが、患者が自己管理をするのが難しい現状が浮き彫りになった。
薬をもらっても指示通りに服用できない患者が多い
日本イーライリリーは「働きながら治療を続ける糖尿病患者の生活スタイルに合わせた最新治療アプローチ」をテーマに都内でプレスセミナーを開催した。 「血糖が高いですね」と医師に言われ、薬をもらってはいるものの言われた通りに服用できないことがある、という心当たりはないだろうか。糖尿病は、初期には自覚症状が乏しく、「治療しなければ」という意識を本人がもちにくい病気だ。しかし、きちんと服薬せずに高血糖を放っておくと、やがて合併症を発症することになる。 糖尿病の治療は着実に進歩している一方で、病気であることを受け入れられず、特に若い世代で適切な治療を拒否・中断してしまう患者が少なくない。 こうした背景の下、石井均・奈良県立医科大学糖尿病学講座教授は、患者中心の治療アプローチに取り組み、治療継続についての成果を上げている。同セミナーでは、石井教授がその取り組みについて講演した。患者の意欲と力を支える支援が重要
患者が理解し行動するように寄り添っていく医療
また、過去の医師と患者の関係が、患者が医療者の指示に従うかどうかを意味する「コンプライアンス」であったことも関係している、と石井教授は指摘している。 これに対して、糖尿病においては治療(療養)の主役は患者であることから、患者の自主性を支えながら治療につなげていこうという「アドヒアランス」を志向することが必要だという。アドヒアランスの考え方は最近になって多くの医療者が取り入れるようになり、臨床現場で実践されている。 「治療をうまく進める鍵となるのは、患者と医療者が強い人間的な信頼関係を築くことです。糖尿病をずっとケアしていくことにとって、よい効果をもたらすためにはどういう関わりをしていけばよいかということを、医師と患者の双方が考える必要がある」と、石井教授は言う。 患者の自発性を促すために医療者が患者に深く関わることが、アドヒアランスを上手く進めるために必要となる。これからは、患者が理解し、行動できるように寄り添う医療にしなくてはいけない。 糖尿病と診断されると、患者は人生の多くの時間を、治療を続けながら過ごすことになる。だからこそ医療者は、患者の生活スタイルや価値観を尊重し、診療にあたる必要がある。「いかにQOLを損ねないようにしつつ、健常人と同じように過ごすことができるかが重要」と石井教授は指摘する。血糖コントロールや症状が良くなればQOLは向上
「糖尿病の治療を続ける自信がありません」「インスリンは必要だと思うが注射はしたくない」という患者は多い。しかし、治療へのやる気を支える確かな方法がある。 石井教授のグループは、糖尿病患者のQOLを評価する質問表「DTR-QOL」を開発した。この質問表は、ダウンロード版PDFやiPad専用の無料アプリが提供されている。従来はQOLの測定には手間がかかっていたが、このアプリを使えば簡便にQOLを測定することができる。患者は診察室に入ったときに自分の気持ちを簡潔で的確に医師に伝えることができる。 DTR-QOLを使用した調査を実施した結果、食事療法、運動療法、飲み薬、インスリン療法といったすべての治療法において、その実行できている人ほどQOLが高い傾向があることが分かった。これは、QOLが高いほうが治療の実行度も高いことも意味している。つまり、自己管理の程度とQOLはお互いが高めあえる関係にあることが判明した。 インスリン治療を開始するのを躊躇したり拒絶する患者が少なくなく、「注射は面倒」「日々の生活が制約される」という思いを抱く患者は多い。しかし、実際にインスリン治療を開始し、血糖コントロールを改善すると、患者の治療への満足度は大幅に向上する。「思っていたほど苦痛ではなかった」「もっと早くインスリンを始めておけば良かった」と言う患者も多いという。 これまで糖尿病治療では、血糖値をよくするためには、薬剤の使い勝手の悪さなどは"仕方がない""我慢するしかない"という考え方があったが、「辛抱だけでは治療は続かない。続かないと効果は上がりにくい」と石井教授は指摘する。 重要なことは、単に便利であるとか、それまでの生活スタイルを妨げないというだけでQOLが高くなるわけではなく、血糖コントロールや症状が良くなるという成果が、治療への意欲を高めるのに大きく貢献するということだ。 さらには、患者にとっては、最初は不便を感じる治療であっても、成果が出るうちに気持ちが変わることが多い。慣れてきた、納得したという気持ちにより、治療に積極的に取り組むようにやり、結果としてQOLが高まっていく。 「何のための治療かを理解し納得すること、その上で、どうすれば仕事や日常生活と両立していけるか、自分の生活リズムに合う薬や治療法はないか、我慢を楽しみに変える方法はないか、などについて考え、相談することが大切です」と、石井教授は言う。働きながら薬を指示通りに飲むのは難しい
日本イーライリリーは、働きながら複数の飲み薬による治療を続けている、40~50代の2型糖尿病患者390人を対象に意識調査を実施し、その結果を発表した。 調査によると、服薬について、医師から処方されている薬を指示通り「きちんと飲めている」患者は44.9%、また、1日の服薬回数が多い患者ほど、きちんと飲めている率が低いことがわかった(1日1回 59.2%、2回 44.0%、3回以上 41.9%)。 医者から設定された目標の血糖値を設定できているかという質問に対して、「達成できている」と答えたのはわずか1割だった。「まあまあ達成できている」も半数以下だった。 指示通り飲めない多くの理由は、「外出先に持っていき忘れる」(57.2%)、「食事が不規則だったり一食抜いたりしてしまう」(42.8%)、「忙しくて飲み忘れる」(33.5%)といった理由が多かった。 自身の生活状況や生活スタイルに合った治療を望んでいる患者は93.6%だったが、実際に自分に合った治療について医師に相談したことがある患者は37.8%だった。 注射に対する抵抗感は81.2%と依然高く、医師から注射薬を提案されたことがある患者は10.5% という現状が浮き彫りとなった。 さらに、働きながら糖尿病治療を続けるポイントとしては、「効果が実感できる薬である」「外出中に薬を飲んだり注射したりする必要がない」「薬の回数が少ない」との回答が多かった。【目次より】
何が楽しみで生きていくのかがわからないんだ
痛いのだけ治してくれればいい。糖尿病は放っといてくれ!
先生はそう言うけど、私、調子がいいんだ
優しそうな顔をしていながら、治せないじゃないかおまえは! 他