スローカロリー研究会が発足 ゆっくり吸収されるカロリーに注目

2015.03.12
 ゆっくりと糖質が消化吸収される「スローカロリー」が肥満や生活習慣病の予防・改善につながり、日本人の食生活の課題を解決する鍵となる可能性がある。「スローカロリー研究会」が、糖質の"質"に注目し、健康的な生活スタイルを提案する取り組みを行うと発表した。

 「一般社団法人スローカロリー研究会」(理事長:結核予防会新山手病院生活習慣病センターセンター長・宮崎滋氏)が3月4日に東京で、「第1回講演会」を開催した。

食品の組み合わせを考慮し生活習慣病を予防・改善

「パラチノース」はスローカロリーの代表的な食品

 「スローカロリー」は、多くの効用があることがさまざまな研究で明らかになっている。同研究会はその活用についてさらに検証し、データを蓄積していくことを活動目的としている。糖質をどのように摂取するか、関連領域の専門家の視点からその可能性を見出していく活動を展開する。

 国際糖尿病連合(IDF)のガイドイランでは「食後およびブドウ糖負荷後の高血糖は、動脈硬化や心筋梗塞などの独立した危険因子」であり、「食後高血糖は有害であり、対処すべきである」と勧告されている。

 「食後高血糖を是正するために"スローカロリー"は有用。同じ炭水化物で、同じカロリーであっても、吸収・消化のされ方によって、"食後血糖やインスリン""内臓脂肪の蓄積""運動時の燃焼性""満腹感の持続性"など、体に与える影響は異なります」と、一般社団法人日本生活習慣病予防協会理事長でタニタ体重科学研究所所長であり、同研究会顧問を務める池田義雄氏は説明した。

 スローカロリーの代表的な食品として「パラチノース」がある。「パラチノース」は砂糖由来の糖質で、カロリーは砂糖と同じ4kcal/gだが、消化吸収速度が砂糖の約5分の1と遅い。

 「パラチノース」摂取による血糖値およびインスリン分泌の変化は2型糖尿病でも緩徐であり、健常者のインスリン抵抗性を軽減させることが研究で確かめられている。また、肥満者にパラチノースを長期摂取させた研究では、内臓脂肪面積を有意に減少することが示された。さらに、「パラチノース」を摂取すると、血糖値を下げるホルモンである「グルカゴン様ペプチド(GLP)-1」の分泌が促進されたことが報告されている。

左から 慶応義塾大学スポーツ医学研究センターの勝川史憲氏、 新山手病院生活習慣病センターの宮崎滋氏、 日本生活習慣病予防協会の池田義雄氏、 東京女子医科大学病院栄養管理部の柴崎千絵里氏、 三井製糖の奥野雅浩氏
 スローカロリー研究会は、スローカロリーの有用性について調査・研究を進め、健康づくりのための食生活を指導する医療・保険指導従事者と一般生活者に向けて、その知識を普及することを目的に今年2月10日に設立された。スローカロリーの概念、意義に関する調査・研究および学術データの蓄積、知識の普及啓発、普及に取り組む医療・保健指導従事者、関連諸団体、企業との連携、産学連携によるスローカロリーを活用した製品・サービスの開発支援、普及促進などの活動を行っていく予定だ。

 同研究会は3月4日にホームページの公開を開始し、今後メールマガジンの配信なども予定している。

一般社団法人 スローカロリー研究会

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