医療スタッフとともに考える糖尿病 患者さんと向き合う治療とは?
糖尿病専門医による知見を集約した「糖尿病情報スクランブル」の「オピニオンリーダーによる糖尿病ガイダンス」では、吉岡成人 先生(NTT 東日本札幌病院糖尿病内分泌内科)による「What is diabetes mellitus...? ―医療スタッフとともに考える―」を公開しました。
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新薬が相次いで発売され、リアルタイムCGMに代表されるデバイス面の進歩、スマートフォンやPCで気軽に使えるさまざまな血糖管理ツールの増加など、糖尿病医療を取り巻く環境は日進月歩で変化しています。さらに、さまざまな研究の成果から、これまでよりも患者さん個人に特化した治療が可能になり、医療スタッフには多様な対応が求められるようになってきました。
このような糖尿病を取り巻く環境の変化の中で、患者さんに治療を継続してもらうためには、何が必要なのでしょうか? 今回のコラムでは、吉岡先生自身の経験をもとにした、糖尿病という病気をもう一度見つめなおし、今後、患者さんと対峙していくためのヒントが垣間見えてきます。ぜひ、ご一読ください。
オピニオンリーダーによる糖尿病ガイダンス
「What is diabetes mellitus...?
―医療スタッフとともに考える―」 (本文より)
吉岡成人 先生(NTT 東日本札幌病院糖尿病内分泌内科)
「糖尿病」とはどのような病気なのでしょうか。
みなさんは、「血糖が高くなる病気ですよね...、インスリンの作用不足によって...。」とお答えになるのではないでしょうか。『糖尿病治療ガイド2014-2015』(日本糖尿病学会編・著)にも「インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群である」と記載されています。
1型糖尿病は、ウイルス感染などの何らかの原因によって自己免疫反応がひきおこされ、その結果として膵β細胞が破壊され、インスリン分泌が枯渇してしまう病気ですし、2型糖尿病はインスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす素因を含む複数の遺伝因子に、過食(特に高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子や加齢によって発症する病気です。
2型糖尿病の病態については長い間インスリンとグルカゴンという2つのホルモンのバランスからとらえていましたが、最近では膵β細胞と膵α細胞のみならず、脂肪細胞や肝臓、筋肉、腎臓、消化管(腸内細菌をも含む)などの各臓器と、臓器間の情報を伝達する神経ネットワークの障害と捉えられています。「インスリンの作用不足」をもたらす要因はさまざまで、極めて複雑であることがわかってきました。