糖尿病の足の壊疽の原因を解明 血管新生を阻害するヘパトカインを同定

2014.07.04
 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科の金子周一、篁俊成両教授らの研究チームは、糖尿病患者の肝臓で分泌されるタンパクが血管新生を妨げることを突き止めた。足が壊疽したり、皮膚の傷が治りにくくなる糖尿病合併症の新たな治療法を開発できる可能性がある。

下肢虚血からの血流回復が早まる

 生体内における既存の血管から新たな血管を作り血流を増やす働きは「血管新生」と呼ばれる。血糖コントロールの悪い糖尿病患者では血管新生が低下しており、血流の低下に関連して足切断や難治性皮膚潰瘍などの合併症が起こることが知られている。

 血管を作る働きを阻害するのは「セレノプロテインP」と呼ばれるタンパク。研究チームは過去の研究で、肝臓が産生する機能未知の分泌タンパクを「へパトカイン」と名付けた。

 同大学の御簾博文特任助教によると、セレノプロテインPは、へパトカインのひとつだ。研究チームは2010年に、セレノプロテインPがインスリン抵抗性を誘導して血糖値を上昇させることを突き止めた。そして今回の研究ではじめて、セレノプロテインPが血管新生を低下させることを明らかにした。

 セレノプロテインPが肝臓で過剰に作られている状態では、血管新生を低下させることで足切断などの合併症が起こりやすくなる。セレノプロテインPの働きを下げる薬剤を開発すれば、糖尿病患者の合併症に対する新たな治療につながる可能性がある。

 血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、血管新生を促進する最も強力な分泌タンパクだ。VEGFは、主に血管内皮細胞にある受容体に結合し、その刺激が細胞内に伝達されることで、細胞分裂や遊走・分化が起こる。

 セレノプロテインPは、VEGFの働きにブレーキをかけることで、血管内皮細胞の増殖を阻害するという。

 動物実験では、セレノプロテインPが増えることで足の動脈の虚血(血管が詰まる状態)からの回復が遅くなることや、逆にセレノプロテインPを減らしたマウスで血流が早く回復することを確認した。

 「糖尿病で足を切断する人は年間数千人に上る。肝臓でのセレノプロテインPの産生を低下させる薬剤や、血管でのセレノプロテインPの作用を落とす薬剤をみつければ、予防できるかもしれない」と研究チームの御簾特任助教は述べている。

 今回の研究成果は、欧州糖尿病(EASD)の学会誌「ダイアベトロジア(Diabetologia)」オンライン版に7月2日付で発表された。

糖尿病で血管新生が悪くなるメカニズムのひとつを解明(金沢大学 2014年7月2日)

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