DPP-4を標的としたワクチンを設計 血糖降下作用を数ヵ月間維持

2014.03.20
 大阪大学大学院連合小児発達学研究科の中神啓徳寄附講座教授(健康発達医学)らの研究チームは、糖尿病の新規治療法としてDPP-4を標的とした治療ワクチンを開発した。DPP-4の機能を阻害するワクチンを設計し、糖尿病のマウスに投与したところ、これまでDPP-4阻害薬の効果として報告されてきたものと同様の改善作用を認めた。

 インクレチンの1つであるGLP-1は食事摂取後に主に小腸から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌を促進し血糖を下げる作用をもつが、血中のDPP-4により分解され不活性化される。このDPP-4を薬剤で阻害し、GLP-1を安定化させ血中濃度を増加させ、インスリン分泌促進作用を強めるのが、インクレチン関連薬の主な作用機序だ。

 研究チームは、このDPP-4を薬剤ではなくワクチンによって阻害することを試みた。DPP-4の部分配列を抗原として設計し、自然免疫を活性化する「アジュバント」と呼ばれる分子と一緒に、2週間毎に3回マウスに接種した。その結果、DPP-4に対する抗体が産生され、DPP-4にその抗体が結合することで、DPP-4の機能を阻害することが判明した。

 次に、高脂肪食を食べさせて糖尿病にしたモデルにこのDPP-4に対するワクチンを投与した結果、血糖を有意に下げることができ、血液中のGLP-1濃度およびインスリン濃度が上昇することも確認した。DPP-4に対する抗体はワクチン接種後の数ヵ月間維持できており、ワクチンの追加により再び抗体が上昇するという。

 生活習慣病における薬物治療は、高血圧・糖尿病・脂質異常症のそれぞれに対する厳格な管理が求められており、疾患ごとに多剤を併用するため、患者ごとに多くの薬剤が必要となることも多い。研究チームは「年に数回のワクチン接種をすることで薬剤と同等の効果を得ることができれば、医療費の削減のみならず、患者の薬の飲み忘れ防止など、治療効果の改善などが期待できる」と述べている。

 研究成果は米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)の電子版に3月17日付けで発表された。

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