膵島細胞内のATPとカルシウムイオンの動態のイメージングに成功

2014.02.17
 京都大学は、膵臓のランゲルハンス島において、インスリン分泌における重要因子である細胞内ATP(アデノシン三リン酸)濃度と、カルシウムイオン濃度の動態を同時に可視化することに成功したと発表した。インスリンを分泌するβ細胞は、血糖値の変化に伴った細胞内ATP濃度の変化を鋭敏に感知し、インスリン分泌をコントロールしていることが明らかになった。

インスリン分泌には細胞内のATPとカルシウムイオンの濃度が重要
ATP濃度に応答して蛍光色が変化するバイオセンサでイメージング

 食後に血糖値が上がると、ランゲルハンス島の大部分を占めるβ細胞がそれを感知してインスリンを分泌し、肝臓や筋肉などの組織において血中のグルコースの取り込みが促され、結果として血糖値が下がる。β細胞からのインスリン分泌がうまくいかなくなると糖尿病となるため、インスリン分泌の仕組みを理解することは糖尿病の予防や治療を考える上でとても重要だ。

 これまでの研究で、ブドウ糖が細胞内で分解された時に作られるATPが、インスリン分泌の直接の引き金である細胞内カルシウムイオン濃度を制御する重要因子であることが予想されていた。しかし、実際にATP濃度がβ細胞内でどのように変化するのか、そしてカルシウムイオン濃度の複雑なパターンの形成に関与しているかは不明だった。

 今村特定准教授らは、以前に開発していたATP濃度に応答して蛍光色が変化するバイオセンサを、マウスより単離した膵島の細胞内に導入して蛍光顕微鏡でイメージングすることにより、生きた膵島細胞内のATP濃度の変化をリアルタイムに追跡する方法を確立した。

 また、同じ細胞に蛍光のカルシウム指示薬を導入することで、インスリン分泌の直接の引き金である、膵島細胞内カルシウムイオン濃度も同時に測定。この測定系を用いて、さまざまな条件で膵島細胞内のATP濃度とカルシウムイオン濃度が変化する様子を調べた。

 その結果、ブドウ糖濃度が上昇することにより、急速に細胞内ATP濃度の上昇が引き起こされることが実際に確かめられた。このATP濃度の上昇が、初期のカルシウムイオンの濃度上昇に必要かつ十分であることも実験的に示された。

膵島細胞内ATP濃度のイメージング
 一方で、ブドウ糖刺激後しばらくしてから生じるカルシウムイオン濃度の振動期においては、ATP濃度の明瞭な振動は起こらず、ATPが高い濃度で保たれていることがカルシウム振動の維持に必要であることを示す新たな知見が得られた。

 糖尿病になることで、膵島細胞内におけるATPとカルシウムイオンの動態がどのように変化するかを詳細に調べることによって、糖尿病が発症する仕組みの解明や新たな治療戦略につながる可能性がある。

 成果は、京都大学白眉センターの今村博臣特定准教授、同・大学院生命科学研究科の垣塚彰教授、同・大学院医学研究科の稲垣暢也教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、1月24日付けで米生化学・分子生物学会の学術誌「The Journal of Biological Chemistry」に発表された。

京都大学白眉センター
京都大学大学院生命科学研究科

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