ATLAS試験 ランタスは用量最適化が容易 患者主導の用量調節でも良好

2013.07.16
 持効型溶解インスリン「ランタス」(インスリン グラルギン)に関する日本を含むアジア太平洋地域の6カ国共同で実施した比較試験「ATLAS(Asian Treat to Target Lantus Study)」の結果が発表された。2型糖尿病患者が主導してランタスを用量調節する治療は、医師主導の通常の治療に劣らない血糖コントロールをもたらし、有用性の高い治療法となることが示された。東京医科大学の小田原雅人主任教授(内科学第三講座)が、サノフィが都内で開いたメディアセミナーで講演した。

患者主導のインスリン用量調節 ランタスは重症低血糖を抑制

 ATLAS試験は、日本、中国、インド、パキスタン、フィリピン、ロシアで実施された国際共同ランダム化比較試験。経口血糖降下薬で血糖コントロール不良で、インスリン未治療の2型糖尿病患者552人(うち日本人は160人)を対象に、ランタスの用量調節を患者自身が行う群(患者主導群)と、医師の診療に基づく通常の方法で行う群(医師主導群)に無作為に振り分け、その血糖降下作用を比較した。

 両群ともに同じアルゴリズムを用いて、空腹時血糖値が110mg/dLとなるようにインスリンの用量調節を行った。患者主導群は、被験者自身が3日ごとにランタスの用量調節を実施し、医師主導群は、直接来院または電話により医師がランタスの用量調節を実施した。

 その結果、患者自身がランタスの用量調節を行うことで、血糖値を目標値近くまで下げられることがあきらかになった。積極的な用量調節を実施することでHbA1cは両群で低下し、投与開始12週後では平均1.2%、24週後では平均1.3%低下した。

 患者主導群は医師主導群に比べ、ランタスの1日量が有意に高く、24週後時点で6.7単位/日の差があった(患者主導群28.9単位、医師主導群22.2単位、p<0.001)。血糖値の相対的な低下度を比較したところ、患者主導群では医師主導群よりも低下度が大きく、投与開始から24週後までの平均HbA1cの変化の差は-0.15%だった(p=0.04)。

 重症低血糖の発現率は患者主導群で0.7%、医師主導群で0.7%と差はなかった。夜間低血糖の発現率は患者主導群16.4%、医師主導群6.5%(p=0.002)、症候性低血糖の発現率はそれぞれ36.0%、25.6% (p=0.002)といずれも患者主導群で高く、治療薬と関連のない重篤な有害事象の発現率はそれぞれ3.3%、1.8%と両群ともに低値だった。

空腹時高血糖130mg/dL未満は最低限目指すべき

 用量調節を患者主導で行う基礎インスリン療法は、健康関連のQOLスコアの改善ももたらし、医師主導で用量調節を行った患者と同程度の成績が得られることがあきらかになった。糖尿病治療満足度質問表(DTSQ)の状況測定版である「DTSQs」のスコアは両群とも同程度で、投与開始24週後の時点で有意な改善がみられた。EQ-5Dを用いたQOLスコアは、日本の患者では患者主導群で0.95、医師主導群で0.97となり高値を示した。

 小田原主任教授は「糖尿病合併症抑制のための糖尿病治療では、血糖値を目標までしっかり下げ目標HbA1cを達成すること(Treat To Target)が重要であり、そのためには基礎インスリンを補充することで空腹時高血糖を改善すること(Fix Fasting First)が必要となる。130mg/dL未満は最低限目指すべき」と指摘。

 その上で、小田原主任教授は医師主導群に比べてHbA1cが有意に低下した患者主導群の優位性を指摘。重症低血糖の発現率も低く、被験者に対する調査でも治療に対する満足度が高かったことから、「ランタスは24時間型基礎インスリンであり、簡易な指標を用いて用量調節することができる。患者主導によるランタスの用量調節は、アドヒアランスの向上にもつながる」とコメントした。

サノフィ

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