体重減に成功しても心血管リスクは変わらず Look AHEAD試験
2013.06.28
過体重や肥満の2型糖尿病患者を対象に、集中的な生活スタイル介入による体重減少を試みた「Look AHEAD」試験の結果が、第73回米国糖尿病学会(ADA)(6月21日~25日、シカゴ)で発表された。食事・運動療法によって減量し、その体重を長期間維持できても、従来療法群に比べ心血管リスク低下は認められなかった。
第73回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会
同試験は、食事でのエネルギー摂取量を適正にコントロールし、運動を増やすことで、どれだけ心血管疾患や脳卒中の発症を減らすことができるかを調べるために実施された多施設共同無作為研究。 研究グループは、米国内16施設に登録された過体重または肥満を有する2型糖尿病患者を、生活スタイルに介入した強化療法群(2,570例、平均年齢58.6歳、女性59.4%、平均体重101kg、平均BMI 35.9)、または患者教育を中心とした対照群(2,575例、同58.9歳、59.7%、101kg、36.0)にランダムに割り付けた。強化療法群は、1日1,200~1,800kcalの食事と、週に175分以上の中強度の運動を続けた。 「Look AHEAD」試験は2012年9月に中止され、治療経過観察期間は中央値は9.6年だった。1年後の体重減少率は、強化療法群では対照群に比べて有意に大きかった(8.6% 対. 0.7%、P<0.05)。試験終了時ではその差は小さくなったが、依然として体重減少率に有意差があった(6.0% 対 3.5%、P<0.05)。HbA1cは、強化療法群で7.3%、対照群で7.2%だった。 1次評価項目を心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、狭心症による入院とした。このうち心血管死などの発生は、強化療法群は403例、対照群は418例であり、100人・年当たり1.83 対 1.92(P=0.51)となり、両群間に有意差は認められなかった。 さらに、2次評価項目である「心血管死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中」のHRは0.93(95%CI 0.79~1.10、P=0.42)でも、両群間に有意差は認められなかった。 「ただし、強化療法群では6%の減量を約10年にわたり維持し、HbA1cが有意に低下しました。慢性腎臓病リスクは31%低下したほか、網膜症と抑うつ症状の減少、QOLの向上など、改善がみられた点は少なくありません。肥満のある2型糖尿病患者は、食事療法と運動療法を断念するべきではありません」と、国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)のメアリー エヴァンス氏は話す。 対照群では降圧薬、スタチン薬、インスリン製剤などが多く使用されており、また強化療法群の減量が不十分であった可能性がある。また、強化療法群は投与された薬物が少なく、1人当たり年間約6万円(600ドル)、研究全体では50万円(5,000ドル)の薬剤費を節約できた。 「研究参加者の平均体重は100kgを超えており、8%の体重減少では不十分であった可能性があります。10%を目指していれば、もっと違う結果がでていたかもしれません」と、エヴァンス氏は指摘している。 Lifestyle Intervention Did Not Reduce Cardiovascular Events in Obese Adults With Type 2 Diabetes(米国糖尿病学会 2013年6月24日)
Cardiovascular Effects of Intensive Lifestyle Intervention in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2013年6月24日)
Results of landmark 11-year study on weight loss's effect on heart disease risks published today(ピッツバーグ大学 2013年6月25日)
同試験は、食事でのエネルギー摂取量を適正にコントロールし、運動を増やすことで、どれだけ心血管疾患や脳卒中の発症を減らすことができるかを調べるために実施された多施設共同無作為研究。 研究グループは、米国内16施設に登録された過体重または肥満を有する2型糖尿病患者を、生活スタイルに介入した強化療法群(2,570例、平均年齢58.6歳、女性59.4%、平均体重101kg、平均BMI 35.9)、または患者教育を中心とした対照群(2,575例、同58.9歳、59.7%、101kg、36.0)にランダムに割り付けた。強化療法群は、1日1,200~1,800kcalの食事と、週に175分以上の中強度の運動を続けた。 「Look AHEAD」試験は2012年9月に中止され、治療経過観察期間は中央値は9.6年だった。1年後の体重減少率は、強化療法群では対照群に比べて有意に大きかった(8.6% 対. 0.7%、P<0.05)。試験終了時ではその差は小さくなったが、依然として体重減少率に有意差があった(6.0% 対 3.5%、P<0.05)。HbA1cは、強化療法群で7.3%、対照群で7.2%だった。 1次評価項目を心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、狭心症による入院とした。このうち心血管死などの発生は、強化療法群は403例、対照群は418例であり、100人・年当たり1.83 対 1.92(P=0.51)となり、両群間に有意差は認められなかった。 さらに、2次評価項目である「心血管死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中」のHRは0.93(95%CI 0.79~1.10、P=0.42)でも、両群間に有意差は認められなかった。 「ただし、強化療法群では6%の減量を約10年にわたり維持し、HbA1cが有意に低下しました。慢性腎臓病リスクは31%低下したほか、網膜症と抑うつ症状の減少、QOLの向上など、改善がみられた点は少なくありません。肥満のある2型糖尿病患者は、食事療法と運動療法を断念するべきではありません」と、国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)のメアリー エヴァンス氏は話す。 対照群では降圧薬、スタチン薬、インスリン製剤などが多く使用されており、また強化療法群の減量が不十分であった可能性がある。また、強化療法群は投与された薬物が少なく、1人当たり年間約6万円(600ドル)、研究全体では50万円(5,000ドル)の薬剤費を節約できた。 「研究参加者の平均体重は100kgを超えており、8%の体重減少では不十分であった可能性があります。10%を目指していれば、もっと違う結果がでていたかもしれません」と、エヴァンス氏は指摘している。 Lifestyle Intervention Did Not Reduce Cardiovascular Events in Obese Adults With Type 2 Diabetes(米国糖尿病学会 2013年6月24日)
Cardiovascular Effects of Intensive Lifestyle Intervention in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2013年6月24日)
Results of landmark 11-year study on weight loss's effect on heart disease risks published today(ピッツバーグ大学 2013年6月25日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]