禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善

2012.12.25
 喫煙者が禁煙することで、酸化ストレスマーカーが有意に低下するとともに、FMDで評価した血管内皮機能が有意に改善することが、第26回日本冠疾患学会学術集会(2012年12月13~15日、東京)で、国際医療福祉大学塩谷病院循環器内科の加藤徹氏により報告された。獨協医科大学心臓血管内科との共同研究。

 喫煙によって産生される活性酸素・フリーラジカルは細胞外マトリックスを経由して血液中に放出され、血管内皮細胞にダメージを与えると考えられている。また、加藤氏らは既に、喫煙が血管内皮機能を障害することを報告している。しかしその過程で酸化ストレスがどのように関与しているのかは明確でないことから、改めて禁煙による酸化ストレス、血管内皮機能の変化を検討した。

 対象は2年以上の喫煙歴を有し、糖尿病や脂質異常症などで加療されておらず、禁煙外来を受診した男性患者10名(56.8±10.0歳)。禁煙補助薬のバレニクリンを用いて介入し、禁煙前と禁煙成功3カ月後とで、酸化ストレスと血管内皮機能の変化を測定した。

 酸化ストレスの指標としては、既報により心血管疾患リスクファクターとの関連が示されている血清d-ROMs(derivative-Reactive Oxygen Metabolites.活性酸素代謝産物濃度)を用い、血管内皮機能は前腕動脈駆血後の血流依存性血管拡張反応であるFMD(Flow Mediated Dilation)によって評価した。

禁煙3カ月で体重増も、LDL-Cは有意に低下し、HbA1cは変化なし
禁煙前後の血清d-ROMs(上)とFMD値(下)の変化

 禁煙前と禁煙3カ月後の臨床指標の変化をみると、体重は事前に予測されたことながら、69.8±12.2kgから72.1±11.4kgに有意に増加した(p=0.019)。

 反対にLDL-Cは、117.7±20.6mg/dLから110.1±26.0mg/dLと有意に低下した(p=0.031)。HbA1cや収縮期血圧、拡張期血圧に有意な変化はなかった(それぞれ、禁煙前5.5±0.6%→禁煙後5.7±0.7%、121.8±9.4mmHg→121.3±6.3mmHg、73.8±9.7→75.0±11.4mmHg)。

血清d-ROMsは有意に低下、FMDは有意に改善
 酸化ストレスマーカーである血清d-ROMsは、禁煙前352.3±63.4U.CARR、禁煙3カ月後317.8±43.6U.CARRで、有意な低下がみられた(p=0.0344)。血管内皮機能のFMDは、禁煙前2.5±1.3%、禁煙3カ月後4.7±1.3%で、有意に改善していた(p=0.0019)。

 血管内皮機能の改善が酸化ストレスの低下を介したものであるかを検討するめために、血清d-ROMsとFMDの関係をみたところ、逆相関の傾向は認められたものの(R=-0.173)、有意ではなかった。加藤氏は、「今回の検討で両者の逆相関が有意でなかったのは検討対象数が少なかったためと考えられ、今後はさらに症例数を増やして検討したい」とまとめた。

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