2型糖尿病の新ガイドラインを発表 第48回EASD

2012.10.03
第48回欧州糖尿病学会(EASD)
 ベルリンで開催されている第48回欧州糖尿病学会で、欧米人を対象とした新しい2型糖尿病の治療ガイドラインが発表された。欧州糖尿病学会(EASD)と米国糖尿病学会(ADA)が共同で策定したもので、「ひとつのサイズを全ての患者に合わせた医療」ではなく、「患者に合わせてより個別化された医療」を提供することを柱としている。

 新ガイドラインで強調されているのは、糖尿病の治療の中心となるのは患者であることだ。「患者が生活していく上で優先したいと思うことを尊重しながら、もっとも効果的な治療を忍耐強く提供していくことが求められる」としている。

 血糖値目標は主にHbA1c(ヘモグロビンA1c)で示される。HbA1cは過去1~2ヵ月の平均血糖値を示している。非糖尿病者では一般に5.6%未満であり、2型糖尿病患者の目標は一般に7%未満とされている。

 新ガイドラインでは、平均余命が長く、心疾患の病歴がなく、低血糖を経験したことがない人では6~6.5%と、より厳しい目標が設定された。一方、65~70歳より高齢の場合は、低血糖による合併症リスクが高く、多種の薬剤による副作用リスクも高いため、目標もゆるく7.5~8%と設定されている。

 「糖尿病の治療で患者と接することは、HbA1cを低下させるための病態生理学を実践することのみを意味しているのではない。患者が見逃すことのできない低血糖などの深刻な副作用を経験すれば、治療薬を服薬しなくなるおそれがある。そうした場合、積極的な血糖コントロールが必ずしも利益をもたらすとは限らない」とガイドラインの編集委員である米エール大学のSylvio Inzucchi氏は話す。

 2型糖尿病の治療では、生活スタイルをより健康的なものに改善することが必須となる。新ガイドラインでは体重を5~10%減らし、毎週最低でも2.5時間の適度な運動を行うよう勧告している。

 ガイドイランでポイントとしてとして挙げたのは以下の7項目だ。特に患者の生活スタイルの尊重が重視されており、「最終決定は患者に委ねられており、医師による薬物療法においても、患者の生活とうまく調和していなければならない」と強調している。

  1. 血糖目標や治療法は個別化されねばならない。
  2. いかなる2型糖尿病治療プログラムにおいても、食事・運動・教育は基本であり続ける。
  3. 禁忌でない限り、メトホルミンが第一選択薬である。
  4. メトホルミンの次の薬剤を決めるデータは限定的であり、副作用を最小限にすることを目標に、1~2種類の経口剤や注射剤を追加することが合理的である。
  5. 最終的に多くの患者で、血糖管理にインスリン治療が必要となる。
  6. すべての治療方針の決定には、患者の嗜好や必要性、価値観が反映されるべきである。
  7. 包括的な心血管疾患リスクの減少が治療の主たる焦点となる。

第48回欧州糖尿病学会(EASD)

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