血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
2012.06.18
血管内皮障害は動脈硬化の最初期の変化されているが、その血管内皮機能が血糖変動に伴って変化し続けており、両者には負の相関があることが、第55回日本糖尿病学会年次学術集会(5月17~19日、横浜)で報告された。福井県済生会病院検査部の岩佐一郎技師の発表。
食後FMDは食前に比べ有意に低下
岩佐氏らはまず、基礎疾患のない成人男性10名(平均年齢43.9歳)を対象とし、食事による血管内皮機能の変化を検討。血管内皮機能はFMD(Flow Mediated Dilation.血流依存性血管拡張反応)検査で評価した。
朝食後は絶飲食とし、昼食前に採血およびFMDを測定。続いて約900kcalの昼食を摂取させ35分後に再度、採血とFMD測定を行った。その結果、食後の血糖値は食前に比し平均54mg/dL有意に上昇していた。
FMDは10名中1名のみ上昇していたが、他の9名は低下しており、変動幅の平均は-2.6%で、この変化は有意であった。なお、血圧や心拍数に有意な変化はなかった。
75gOGTTの30分毎測定でFMDは鋭敏に変化。血糖とは負の相関
続いて75gOGTTによるFMDの変化を検査技師3名を被検者として検討。朝食後絶飲食ののち糖負荷後は30分ごとに採血とFMD測定を行った。
結果は3名いずれも、糖負荷後の血糖上昇ピーク時にFMDが最も低値となり、血糖が負荷前値に近付くに従ってFMDが回復するという、一致した変動パターンが確認された。この3名の血糖とFMDの値をプロットすると、両者に有意な負の相関がみられた(R2 =0.4131,p<0.01)。
50代男性の血糖とFMDの変化
血糖の変化に追随しFMDが鋭敏に変化しており、両者は相反する。
他の2名の検討(20代女性と30代女性)でも同様の結果が得られた
他の2名の検討(20代女性と30代女性)でも同様の結果が得られた
血糖変化に連動しFMDはダイナミツクに変動。頻回測定で新たな治療指標となる可能性も
これらの結果のまとめとして岩佐氏は、「高血糖が一時的にせよ血管内皮機能を低下させる要因の一つであると考えられ、持続的な高血糖下では内皮機能低下状態が続くことになり、内皮障害が不可逆化し永続的な動脈硬化の進展につながると推測される」と考察した。また、「FMDは被検者の測定時の状態により変化するため、従来は正確な測定が繁雑という負のイメージをもっていたが、このことは逆に言えば、FMDがその時点の患者さんの状態を感度よく表していると考えるようになった」と述べた。
健常者においてはFMDが血糖に連動しダイナミックに変化していることが示され、今後FMDは動脈硬化の早期発見のみでなく、頻回測定することにより治療評価指標の一つとして用い得るかもしれない。
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