メトホルミン使用の2型糖尿病患者 大腸がんリスクが37%低下

2011.10.17
 血糖コントロールが不良の糖尿病の人はがんを発症しやすいことが、多くの統計的な調査であきらかになっている。メトホルミン(ビグアナイド薬)を使い薬物療法を行っている人では、がんの危険性が低下するとの研究が発表された。

 メトホルミンが、がん細胞の成長を抑制し、がんのリスクを低下することは、基礎研究と臨床研究の両方で報告されている。最近の疫学研究で、2型糖尿病患者がメトホルミン療法を行うと、がんの危険性が低下し、がんによる死亡が全体的に低下することが示唆されており、注目を集めている。

 中国・上海交通大学のZhi-Jiang Zhang氏らは5件の試験、10万8,161例を対象としたメタ解析を実施した。この研究は米国糖尿病学会が発行する医学誌「Diabetes Care」に発表された。

 研究者らは、医療文献データベース(PubMedとSciVerse)を使い、2型糖尿病患者の結腸・直腸がんに対するメトホルミン療法の影響を検討した研究を探索しメタ解析した。

 メトホルミンは結腸・直腸がんのリスク低下と関連しており、メトホルミン療法により相対危険度は0.63倍になった(95%信頼区間)。結腸直腸腺腫を調査した研究1件を除く4件の研究は、10万7,961人の糖尿病患者を対象としており、フォローアップ期間中に結腸直腸がんの発症は589件あった。

 「観察研究から、メトホルミンによる治療により、結腸・直腸がん有意な低下につながることがあきらかになった。この仮説を実証するためには、さらなる研究が必要だが、もしも結腸・直腸がんの危険性を有効に低下させることがはっきりすれば、メトホルミンによる治療が患者に対し推奨されることになるだろう」とZhang Zhijiang氏は述べている。

 メトホルミンの使用により、結腸・直腸がんの再発が低下するのか、あるいは結腸直腸の多発性腫瘍の発症が低下するのかは、あきらかになっていないという。

Reduced Risk of Colorectal Cancer With Metformin Therapy in Patients With Type 2 Diabetes
A meta-analysis

Diabetes Care October 2011 vol. 34 no. 10 2323-2328

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