健康日本21作業チーム評価案 糖尿病合併症の減少は「D判定」
2011.09.26
厚生労働省の健康日本21評価作業チーム(座長:辻一郎・東北大大学院医学系研究科公衆衛生学分野教授)は、「健康日本21」の9分野の1つである「糖尿病」の評価案を公開した。糖尿病合併症については目標を超えて悪くなったため「D判定(悪化)」とした。
糖尿病は、適切な治療を行わず放置していると、網膜症・腎症・神経障害などの合併症を引き起こす。糖尿病が原因で多くの患者が透析治療を導入している。さらに、糖尿病が脳卒中、虚血性心疾患などの心血管疾患の発症・進展を促し、健康寿命を縮める原因となっていることもよく知られている。 今後も社会は高齢化し、2型糖尿病とその予備群は増加していくとみられている。糖尿病と糖尿病合併症の予防は患者のQOLを高め、医療経済の負担軽減にもつながる。そのため政府は糖尿病を重点的な課題として取り上げている。 作業チームでは「糖尿病」について、それぞれ直近の実績値と目標値との関係などをふまえ、担当委員がA~Dの4段階の評価案を示した。糖尿病は有病者数に関する項目が目標の推計1000万人を下回ったことからA判定(目標値に達した)とした。一方、糖尿病合併症については目標を超えて悪くなったため、D判定(悪化した)とした。 主な内容は次の通り――
糖尿病有病者数の増加は抑えられている
- 糖尿病健診の受診と受診後の保健指導を受けている人の割合は改善した。
糖尿病の健診を受診した人の数は、健康日本21が策定された1997年は4573万人だったが、2007年には6013万人に増えた。また、受診後に保健指導を受けた人の割合も、男性は66.7%から80.6%に、女性は74.6%から79.4%に増えた。 - 糖尿病の治療を継続している人の割合は45%から56%に改善した。
今後は治療を中断する原因について調べる必要がある。
糖尿病合併症は目標を超えて悪化
- 糖尿病が原因で透析療法を開始した患者数は1万6416人。
新たに透析治療を始めた患者は、1998年1万729人から2009年の1万6416人に増えた。透析導入例は増加を続けていたが、2008年からは横ばいになった。今後、減少に転じるかが注目される。 - 糖尿病が原因で失明した人の数は2221人(2008年度社会福祉行政業務報告)。
糖尿病による失明は減少傾向がみられるものの、年間2000人以上が新規に視覚障害となっている。 - 糖尿病有病者数の増加を抑える目標は達成した一方で、糖尿病予備群の増加が問題となっている。
- 2008年度に開始された特定健診・保健指導では、メタボリックシンドロームの該当者・予備群の数は、男女あわせ約576万人(2009年)。
国民健康・栄養調査では、メタボの該当者・予備群の割合は、男性53.5%、女性18.4%。
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]