昨年の薬局ヒヤリ・ハット事例 報告回数が多い糖尿病用薬

2011.09.22
 日本医療機能評価機構は、昨年1年間に薬局で発生、または発見したヒヤリ・ハット事例をまとめた年報を公表した。全国の薬局数5万3642軒のうち参加薬局は3449軒(昨年12月31日現在)で、報告されたヒヤリ・ハット事例は1万2904件だった。

 調査は、日本医療機能評価機構の医療事故収集等事業として行われたもので、医薬品、医療機器、薬局関連の事例ともに抽出対象は、2010年7月1日から12月31日までに行われた。医薬品に関するヒヤリ・ハット事例の情報や医療事故の事例の情報は、同機構のホームページで公表されている。

後発医薬品をめぐるヒヤリ・ハット事例が増加

 ヒヤリ・ハット事例の内訳を見ると、「調剤」が94.7%で大半を占め、その内訳は「数量間違い」が39.9%で最も多く、「規格・剤形間違い」(13.2%)や「薬剤取違え」(11.2%)なども多かった。

 目立って増えたているのは「薬剤取違え」(1372件)。薬剤の種類が増えており、薬剤名称の頭文字が同じであったり、音韻が似ているなど類似性があるもので、取違えが増えている傾向がみられる。「名称類似に関する事例」は402件、「医薬品の頭文字が3文字以上一致」が258件、「2文字のみ一致」が144件報告された。

 さらに、注目されたのは後発医薬品をめぐるヒヤリ・ハット事例。一般名が同じでも、先発医薬品と後発医薬品で名前が異なるものが少なくない。8月に開催された厚生労働省の医療安全対策検討会議でも「商品名が異なるのものがあり、誤処方につながりやすい」と問題が提起された。

「薬剤取違え」糖尿病用剤で報告された事例
処方された医薬品間違えた医薬品
グリミクロン錠40mgグリチロン配合錠(肝臓疾患用剤)
グルコバイ錠50mgグルファスト錠10mg(糖尿病用剤)
グルファスト錠10mgグルコバイ錠50mg(糖尿病用剤)
ボグリボースOD錠0.2mg「MED」ボグリボース錠0.2mg「SW」(糖尿病用剤)
ボグリボースOD錠0.3mg「タカタ」ボグリボースODフィルム0.2「QQ」(糖尿病用剤)
 ハイリスク薬は、処方せん調剤に限らず、患者に対する薬学的な管理、指導も含め、調剤業務を行う上で特に注意すべき医薬品。品目数と報告回数では、精神神経用剤や糖尿病用薬が品目数、報告回数ともに多く、糖尿病用薬は特に品目数に対する報告回数が多かった。

 ハイリスク薬の品目数は、精神神経用剤の137品目が最も多く、次に糖尿病用薬が58品目。報告回数は、精神神経用剤が600回と最も多く、次に糖尿病用薬が418回だった。

ハイリスク薬のヒヤリ・ハット事例上位30品目のうち糖尿病用薬は12品目に上った
販売名報告回数
アマリール1mg錠78件
ベイスンOD錠0.327件
アクトス錠1520件
ベイスンOD錠0.219件
ノボラピッド30ミックス注フレックスペン18件
メルビン錠250mg16件
アクトス錠3015件
オイグルコン錠2.5mg14件
メデット錠250mg14件
ノボラピッド注フレックスペン13件
グルコバイ錠50mg12件
ボグリボースOD錠0.3mg「サワイ」12件
ノボリン30R注フレックスペン11件
ハイリスク薬の「薬剤取違え」糖尿病用剤で報告された事例
処方された医薬品間違えた医薬品
ノボリン30R注フレックスペンノボラピッド30ミックス注フレックスペン
ノボリン30R注フレックスペンノボラピッド注フレックスペン
ヒューマログミックス50注キットノボラピッド50ミックス注フレックスペン
ヒューマログ注ミリオペンノボラピッド注300フレックスペン
ノボラピッド注300フレックスペンノボリンR注100
ノボラピッド注フレックスペンノボリン30R注フレックスペン
ノボラピッド注フレックスペンノボリンR注フレックスペン
ノボラピッド30ミックス注フレックスペンノボリン30R注フレックスペン
ノボラピッド50ミックス注フレックスペンノボリン50R注フレックスペン
ランタス注ソロスターノボリンN注フレックスペン
レベミル注フレックスペンノボラピッド注フレックスペン
グリミクロン錠40mgダオニール錠2.5mg
グリミクロンHA錠20mgオイグルコン錠2.5mg
グルコバイ錠50mgセイブル錠50mg
グルコバイ錠50mgグルファスト錠10mg
ボグリボースOD錠0.3mg「サワイ」セイブル錠50mg
グルファスト錠10mgグルコバイ錠50mg
 調査をまとめた日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部では「医療機関と薬局とで有用な情報を共有することが必要だ。薬剤に関する事例は、医療機関と薬局とがそれぞれ独立して分析や対策をするのではなく、一元的に医療安全対策を考えていくことが重要となる」と述べている。

薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成22年年報(公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故防止事業部 平成23年8月30日)

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