空腹時血糖値(IFG):日本人でも100mg/dL以上で糖尿病リスクが上昇
2011.08.10
空腹時血糖値が高めの人は、生活習慣の改善など適切な対策をしないでいると、将来に2型糖尿病を発症しやすいことが知られている。日本人ではどの基準値であると良いのか――。国立がん研究センターはこのほど、空腹時血糖値と2型糖尿病の発症率に関する多目的コホート研究「JPHCスタディ」の結果をまとめた。
糖尿病の診断に用いられる空腹時血糖値の、正常値との境界ラインは、世界保健機関(WHO)や日本では110mg/dLとしているが、米国では100mg/dLとしており、世界で統一されていない。
糖尿病リスクは空腹時血糖値100mg/dLあたりから上昇
研究では、岩手、秋田、茨城、新潟、長野、高知、沖縄の8保健所地域に住む男女約2207人(男性821人、女性1386人)を対象に、1998~2000年度から5年間、追跡調査した。糖尿病の発症について、空腹時血糖値126mg/dL以上を用いて判定したほか、参加者に自分で申告してもらった。期間中に125人が糖尿病を発症した。
糖尿病の診断基準:空腹時血糖異常(IFG)
Fasting plasma glucose and 5-year incidence of diabetes in the JPHC diabetes study - suggestion for the threshold for impaired fasting glucose among Japanese
Endocrine Journal 2010, 57 (7), 629-637
空腹時血糖値の判定区分
日本の糖尿病の診断基準での「糖尿病型」の判定には、空腹時血糖値が126mg/dL以上であることが含まれる。空腹時血糖値が110mg/dL未満であると「正常型」、110mg/dL以上126mg/dL未満であると「境界型」とされる。
一方、米国糖尿病学会(ADA)は空腹時血糖値が「100mg/dL~126mg/dL」の場合を「前糖尿病(pre-diabetes)」として、「糖尿病を発症する危険性が高い」と判定し、発症を予防するための保健指導が必要だと定めている。
これは、米国人を対象とした臨床研究のデータで、空腹時血糖値が「100mg/dL以上」の人で、糖尿病の発症率が有意に高かったことを根拠としている。
日本糖尿病学会(JDS)も2008年に、メタボ健診などで空腹時血糖値が100~109mg/dLと出た場合は、正常域ではあっても血糖値が高めで、将来に糖尿病や耐糖能障害を発症する危険性が高く、糖尿病の早期発見にも役立つことから、「正常高値」と判定し、適切な保健指導をはじめるのが望ましいとの報告を公表した。
ただし、食後の血糖値が高くなる「耐糖能異常」を正確にみつけるために、経口ブドウ負荷試験(OGTT)を行うことを勧めている。経口ブドウ負荷試験は糖尿病の診断方法のひとつで、糖尿病が疑われる患者にブドウ糖水溶液を飲んでもらい、一定時間の経過後の血糖値を測定し、高血糖を確かめる方法。
多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部出典:日本糖尿病学会編「糖尿病治療ガイド2010」
Fasting plasma glucose and 5-year incidence of diabetes in the JPHC diabetes study - suggestion for the threshold for impaired fasting glucose among Japanese
Endocrine Journal 2010, 57 (7), 629-637
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]