アクトスのフランスでの使用制限 PMDAは「患者判断で服用中止さけるべき」
2011.06.13
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は6月10日付けで、チアゾリジン薬「アクトス」のフランスにおける使用制限についてコメントを発表した。「現在、これらの医薬品を服用中の患者さんは、この情報をもとにご自身の判断のみで、服用を中止したり、減量したりしないでください。ご不明な点は主治医にご相談ください」と注意を呼びかけている。
ピオグリタゾン塩酸塩製剤のフランスにおける使用制限について(医薬品医療機器総合機構 平成23年6月11日)
ピオグリタゾン製剤に関する情報について(日本糖尿病学会)
アクトス(ピオグリタゾン塩酸塩)のフランスにおける措置に関する情報(武田薬品工業)
医師向け:フランスにおけるピオグリタゾン塩酸塩製剤に対する措置について
患者向け:アクトス、メタクト、ソニアスに含まれる成分に関するフランスの措置について
アクトス服用「今後の治療については主治医に相談」
6月9日、フランス規制当局(Afssaps)は、ピオグリタゾン塩酸塩を有効成分とする医薬品の使用患者の膀胱がん発生リスクに関する疫学研究の結果を受け、新規処方をしないよう通達した。服用中の患者は自己判断で服用を中止せず、主治医に相談するよう促している。 関連する医薬品は、武田薬品工業が製造販売している「アクトス錠」、「アクトスOD錠」、「メタクト配合錠」、「ソニアス配合錠」。 今回のAFSSAPSの措置は、フランス当局が実施していた疫学調査の全体解析において、ピオグリタゾン投与群で、非投与群と比較して、膀胱がんの発症率が有意に高い結果が得られたことに基づくもの。 この疫学研究「CNAMTS」は、フランス国内のデータベース内の約150万人の糖尿病患者(40~79歳)に関する2006~09年のデータを用い、膀胱がんなどがん発生率を比較した後ろ向きコホート研究。ピオグリタゾンを投与された約16万人では、非投与患者約133万人に比べて、膀胱がんの発症率が有意に高い結果が得られた(HR=1.22[95%CI 1.05-1.43])。他のがんについては発症率の増加はみられなかった。 この疫学研究の結果について、医薬品医療機器総合機構(PMDA)および欧州医薬品庁(EMA)でも、今後評価を行う予定としており、現時点でピオグリタゾン塩酸塩製剤の服用を変更することは勧めていない。 PMDAは「現時点において、ピオグリタゾン塩酸塩製剤の服用を直ちに中止することを推奨するものではない」として、「今後、評価結果が得られましたら、速やかに情報提供する予定」と述べている。また、日本国内で同剤を使用している患者に対し、自らの判断で服用を中止したり、減量しないよう求め、主治医に相談するよう求めている。 製造販売業者である武田薬品工業も同日、医師・患者の双方にコメントを発した。患者向けには「今後の治療方針に関しては、主治医の先生とご相談いただき、くれぐれもご自身の判断で薬の使用を中止しないようお願い申しあげます」と注意を促している。 ピオグリタゾンの膀胱がんとの関連については、承認前のがん原性試験で雄ラットにのみ膀胱腫瘍がみられた。武田薬品は、ラットの特異的所見との見解から、欧米の規制当局(FDA、EMA)と協議の上、膀胱がんとの関係を評価するための疫学研究「KPNC」を実施していた。 この中間解析結果は、2010年に英国で開催された第26回国際薬剤疫学学会で発表され、11年にはDiabetes Careに掲載された。層別解析では、治療期間が長くなると膀胱がんのリスクがわずかながら増加する可能性が示唆されたが、主要解析である全体解析ではリスクを増大するとはいえないとの結果も示されている(HR=1.2[95%CI 0.9-1.5])。 (Lewis J D. et al:Diabetes Care, 34: 916, 2011.) 製薬企業からの医薬品の適正使用に関するお知らせ(医薬品医療機器総合機構 平成23年6月11日)ピオグリタゾン塩酸塩製剤のフランスにおける使用制限について(医薬品医療機器総合機構 平成23年6月11日)
ピオグリタゾン製剤に関する情報について(日本糖尿病学会)
アクトス(ピオグリタゾン塩酸塩)のフランスにおける措置に関する情報(武田薬品工業)
医師向け:フランスにおけるピオグリタゾン塩酸塩製剤に対する措置について
患者向け:アクトス、メタクト、ソニアスに含まれる成分に関するフランスの措置について
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]