GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病・肝硬変の患者の肝硬変・肝不全・心血管イベントを低下

2023.08.24
 2型糖尿病および肝硬変の患者がGLP-1受容体作動薬を使用した場合、死亡・心血管イベント・非代償性肝硬変・肝性脳症・肝不全のリスクがそれぞれ有意に低下することが、台湾で実施された3年以上の長期転帰調査で示された。

 GLP-1受容体作動薬の累積使用期間が長いほど、対照群に比べこれらのリスクが低くなることも分かった。

GLP-1受容体作動薬を使用した患者は死亡・心血管イベント・非代償性肝硬変・肝性脳症・肝不全のリスクが低下

 2型糖尿病および肝硬変の患者がGLP-1受容体作動薬を使用した場合、死亡・心血管イベント・非代償性肝硬変・肝性脳症・肝不全のリスクがそれぞれ有意に低下することが、台湾で実施された3年以上の長期転帰調査で示された。

 研究は、台湾の国立陽明交通大学臨床医学研究所のChii-Min Hwu教授らによるので、研究成果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に掲載された。

 研究グループは今回、台湾国民健康保険研究データベースの、2008年1月1日~2019年12月31日のデータから、GLP-1受容体作動薬の使用者と、未使用の対照群の467組を選定。多変数調整したCox比例ハザードモデルにより比較した。

 平均追跡期間は、GLP-1受容体作動薬群で3.28年、対照群で3.06年だった。死亡率はそれぞれ、1,000人年あたり27.46例と55.90例だった。

 多変量解析の結果、GLP-1受容体作動薬群は対照群と比較し、死亡リスク[調整ハザード比 0.47、95%CI 0.32~0.69]、心血管イベント[同 0.6、95%CI 0.41~0.87]、非代償性肝硬変[同 0.7、95%CI 0.49~0.99]、肝性脳症[同 0.59、95%CI 0.36~0.97]、肝不全[同 0.54、95%CI 0.34~0.85]となり、いずれもGLP-1受容体作動薬群の使用により肝硬変・肝不全のリスクが低下することが示された。

 さらに、GLP-1受容体作動薬の累積使用期間が長いほど、対照群に比べこれらのリスクが低くなることも分かった。

 肝硬変は2型糖尿病と関連していることが多いものの、これまで肝硬変患者を対象とした2型糖尿病治療に関する研究は少なかった。

 肝臓が他の臓器に与える影響は大きく、たとえばNASH(非アルコール性脂肪肝炎)患者は心血管疾患の発症率が2倍以上高いことなどが報告されている。

 研究グループは、「今回の集団ベースのコホート研究の結果を確認するために追加の試験が必要となる」としながらも、「GLP-1受容体作動薬を使用した患者は、2型糖尿病および代償性肝硬変の患者での死亡・心血管イベント・非代償性肝硬変・肝性脳症・肝不全のリスクが有意に低いことが示された」と結論している。

Glucagon-like Peptide-1 Receptor Agonist Use in Patients With Liver Cirrhosis and Type 2 Diabetes (Clinical Gastroenterology and Hepatology 2023年6月16日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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