インスリン過剰分泌による刺激が膵β細胞の機能障害を引き起こすことを発見 横浜市立大学ら

おもに生活習慣が原因の2型糖尿病では、膵β細胞からのインスリン分泌が低下することが知られている。従来の動物モデルを用いた研究では、肥満などによる筋肉や肝臓でのインスリン抵抗性が引き金となって、膵β細胞の機能障害が起きることが示されてきた。しかし、2型糖尿病には人種差・個人差があり、肥満やインスリン抵抗性をほとんど伴わずに膵β細胞の機能が障害を受けるタイプも存在する。そのような非肥満型の糖尿病において、膵β細胞が機能障害に陥るのかは不明で、治療の手立てもわからない状況であった。
そこで本研究グループは、インスリンの分泌過多が膵β細胞にとってストレスになるのではないかと考え、マウスに20%グルコースを含む水を飲料水として与え続けた。その結果、2週間でインスリン分泌量が低下し、血糖値が上昇することがわかった。
このマウスの膵β細胞では、機能障害の指標である転写調節因子Mafaの発現レベルの低下が確認された。培養β細胞に高グルコース刺激やKCl刺激を与えてインスリン分泌を促した場合もMafaの発現レベルが激減した。
研究グループはこのメカニズムを探るため、RNA-seq解析/ChIP-seq解析などを行ったところ、インスリン分泌刺激によりストレス応答性転写因子Tfe3が活性化されることが発見された。また、活性化されたTfe3は、Mafa遺伝子のエンハンサー(遺伝子を働かせるスイッチの役割を持つゲノムDNA領域)に結合して発現を抑制するという、これまで知られていなかった新たな機能を持つことも明らかとなった。
最後に、グルコースを与え続けたマウス(非肥満型)と、従来よく用いられてきた2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウス(肥満型)を比較したところ、いずれのマウスの膵β細胞もインスリン分泌能とMafaレベルの低下が認められたが、Tfe3の活性化はグルコースを与え続けたマウスでしか起きていなかった。これにより、2型糖尿病に伴う膵β細胞の機能障害は、Mafaレベルの低下が鍵となる点は共通しているものの、糖尿病のタイプによって、障害に至る仕組みが異なることが示された。
研究グループは、「本研究では、20%グルコースを含む水を2週間与え続けるだけで、肥満を伴わずに膵ベータ細胞の機能障害が起きることが分かった。このような簡単な操作で、日本人に多い非肥満型の糖尿病モデルマウスが確立されたことによって、糖尿病のタイプごとに発症の仕組みが異なることが強く認識され、あまりアプローチされてこなかった非肥満型の糖尿病の仕組みの解明や治療法の開発につながることが期待される」と述べている。
本研究は、横浜市立大学大学院生命医科学研究科 生体機能医科学研究室准教授 片岡浩介氏らの研究グループと、東京農業大学生命科学部教授 笠原浩司氏、生物資源ゲノム解析センター博士研究員(当時) 輿石雄一氏との共同で実施され、研究成果が2026年3月11日付で「iScience」にオンライン公開された。



