GLP-1受容体作動薬「ウゴービ皮下注」(セマグルチド)が肥満症治療薬として承認 糖尿病合併の肥満でも血糖改善

2023.03.30
 ノボ ノルディスク ファーマは3月27日、週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬「ウゴービ皮下注0.25mg SD」「ウゴービ皮下注0.5mg SD」「ウゴービ皮下注1.0mg SD」「ウゴービ皮下注1.7mg SD」「ウゴービ皮下注2.4mg SD」(一般名:セマグルチド(遺伝子組換え))について、肥満症治療薬として、厚生労働省より承認を取得したと発表した。

 同剤は、空腹感を軽減し、満腹感を高めることにより、食事の量を減らしてカロリー摂取量を抑え、体重減少を促す。

肥満症治療薬として承認されている唯一のGLP-1受容体作動薬

 ノボ ノルディスク ファーマは、週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬「ウゴービ皮下注0.25mg SD」「ウゴービ皮下注0.5mg SD」「ウゴービ皮下注1.0mg SD」「ウゴービ皮下注1.7mg SD」「ウゴービ皮下注2.4mg SD」(一般名:セマグルチド(遺伝子組換え))について、肥満症治療薬として、厚生労働省より承認を取得したと発表した。

「ウゴービ皮下注」(セマグルチド(遺伝子組換え))

適応症 肥満症
ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
・ BMIが27kg/m²以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する*
・ BMIが35kg/m²以上
* 高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを含む肥満に関連する健康障害(肥満症の診断に必要な健康障害)を2つ以上有するもの。

肥満と肥満症について
 日本では、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数、BMI 25以上のものが「肥満」と定義されている。「肥満症」は、肥満があり、肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態と定義されている。

肥満症の診断に必要な健康障害
1. 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
2. 脂質異常症
3. 高血圧
4. 高尿酸血症・痛風
5. 冠動脈疾患
6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
8. 月経異常・女性不妊
9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10. 運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
11. 肥満関連腎臓病

 「ウゴービ」(一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)は、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られていない、BMIが27以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、もしくはBMIが35以上の肥満症を適応とする肥満症治療薬として承認されている、世界初にして唯一の週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬となった。同剤は、空腹感を軽減し、満腹感を高めることにより、食事の量を減らしてカロリー摂取量を抑え、体重減少を促す。

2型糖尿病合併の肥満でも血糖・血圧・脂質パラメータが改善

 日本でのウゴービ皮下注の承認は、日本人585人を含む5,085人の過体重または肥満の成人が参加した、STEP臨床試験プログラムの結果にもとづいている。

 なお、世界では、BMI25以上を「過体重(Overweight)」、BMI30以上を「肥満(Obesity)」と判定している。

 日本人が参加した国際共同試験(STEP 1試験およびSTEP 2試験)および東アジア試験(STEP 6試験)では、生活習慣の改善(食事療法および運動療法)だけでは十分な減量効果が得られない過体重または肥満の成人で、主要評価項目であるベースラインから投与68週時までの体重変化率および投与68週時に5%以上の体重減少を達成した被験者の割合について、ウゴービ皮下注2.4mg SD(週1回皮下投与)のプラセボに対する優越性が示された。

 また、肥満に関連する合併症(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症)についても、ウゴービ皮下注2.4mg SDの投与による血糖、血圧および脂質パラメータの改善が認められた。

 STEP臨床試験プログラムを通じて、ウゴービ皮下注2.4mg SDの安全性および忍容性プロファイルは既存のGLP-1受容体作動薬と同様であり、新たな安全性に関する問題は認められなかった。

 「ウゴービ皮下注の承認は、肥満症とともに生きる方々にとって大きな希望を与えるものです。肥満症は、長期的な医学的管理を必要とする慢性疾患です。肥満症患者さんの多くは、体重を減らすために最善の努力をしているにも関わらず、体重を元に戻そうとする生物学的機構 (代謝適応) が働くため、減量を維持することが困難になっています。1週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬であるウゴービ皮下注は、これまで肥満症の基本的治療である食事・運動療法で有効な減量が得られなかった患者さんに新しい治療オプションを提供することができると確信しています」と、同社では述べている。

 なお、ウゴービ皮下注は、これまでに「Wegovy」の販売名で米国、欧州連合、英国、カナダ他複数の市場で承認されている。またWegovyは、米国、デンマーク、ノルウェーで販売されている(2023年3月27日現在)。

STEP臨床試験プログラム

 STEP(肥満患者でのセマグルチドの治療効果)は、肥満の成人を対象とした、ウゴービ皮下注2.4mg SDの週1回皮下投与による第3相臨床開発プログラム。
 過体重または肥満の成人約4,700人が登録された4つの試験で構成される第3a相グローバル臨床プログラム3に加えて、肥満症の成人約400人が登録された東アジア試験(STEP 6試験)などが実施されている。
 STEP試験では、主要estimand(治療方針estimand)により、治療の遵守または他の抗肥満治療の開始の有無に関わらず効果が評価されている。副次的estimand(治験薬estimand)では、すべての人々が治療を遵守し、他の抗肥満治療を開始しなかったと仮定した場合の効果が評価されている。

STEP 1試験 (過体重または肥満の成人)

 STEP 1試験は68週間、無作為割り付け、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照の国際共同試験。同試験では、ウゴービ皮下注2.4mg SDを週1回、68週間にわたって皮下投与した際の、プラセボに対する有効性および安全性が検討された。同試験は、合併症をともなう過体重または肥満の成人1,961人を対象に、生活習慣の介入を行ったうえで実施された。

STEP 2試験 (2型糖尿病を有する過体重または肥満の成人)

 STEP 2試験は68週間、無作為割り付け、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照の国際共同試験。同試験では、ウゴービ皮下注2.4mg SDを週1回、68週間にわたって皮下投与した際の、プラセボおよびウゴービ皮下注1.0mg SD週1回皮下投与に対する有効性および安全性が検討された。同試験は、2型糖尿病を有する肥満または過体重の成人1,210人を対象に、生活習慣の介入を行ったうえで実施された。

STEP 6試験 (高血圧、脂質異常症もしくは2型糖尿病を有する肥満症の成人)

 STEP 6試験は68週間、無作為割り付け、二重盲検、多施設共同、プラセボ対照の東アジア試験。同試験では、ウゴービ皮下注2.4mg SDまたは同1.7 mg SDを週1回、68週間にわたって皮下投与した際の、プラセボに対する有効性および安全性が検討された。同試験は、高血圧、脂質異常症もしくは2型糖尿病を有する肥満症の成人401人を対象に、生活習慣の介入を行ったうえで実施された。

 なお、肥満と肥満症の違いや、日本と海外の肥満の考え方については、同社の肥満症疾患啓発サイト「TRUTH ABOUT WEIGHT肥満症を知る」に掲載しているとしている。

Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss (New England Journal of Medicine 2012年1月26日)
Effects of once-weekly semaglutide on appetite, energy intake, control of eating, food preference and body weight in subjects with obesity (Diabetes, Obesity and Metabolism 2017年3月7日)
Semaglutide 2.4 mg for the Treatment of Obesity: Key Elements of the STEP Trials 1 to 5 (Obesity 2020年5月22日)
一般社団法人 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン 2022」

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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