アルコールを飲み過ぎている男性で腎機能が低下 適度な飲酒であると予防効果も 特定健診受診者30万人強を調査
アルコールを飲み過ぎている男性は腎機能が低下
大阪大学は、1日あたり「純アルコール換算で60g(ビールロング缶3本、日本酒3合に相当)以上」の大量飲酒は、男性の腎機能低下のリスク因子となることを、特定健診受診者30万人強を対象にしたコホート研究で明らかにした。
研究グループは今回、18都道府県の40~74歳の特定健診受診者30万4,929人の腎機能(推算糸球体濾過量)の変遷を中央値2.9年間追跡した。
2008年4月~2011年3月に特定健診を受診した40~74歳の男性12万5,698人を中央値2.9年間追跡した結果、「ときどき飲酒」している男性に比べて、「1日あたり純アルコール約60g以上飲酒」している男性と、「ほとんど飲まない」男性は、1年あたりの腎機能(糸球体濾過量、mL/分/1.73m²)の低下速度が速いことが明らかになった。30%以上の腎機能低下のリスクでも同様の傾向がみられた。
アルコール摂取量とeGFR勾配とのあいだに、男性では逆U字型の関連がみられた一方で、女性は飲酒量が少なく、明らかな関連はみられなかった。
男性の多変量解析されたeGFR勾配は、飲酒量を「ときどき飲む(Occasional)」を基準とした場合、ほとんど飲まない(Rare)で−0.33[95%信頼区間 −0.57~−0.09]、1日の純アルコール量が19g以下で−0.06[同 −0.39~0.26]、20~39gで−0.16[同 −0.43~0.12]、40~59gで−0.08[同 −0.47~0.30]、60g以上で−0.79[同 −1.40~−0.17]となった。
純アルコール約20g(ビールロング缶1本、日本酒1合相当)の適度の飲酒をしていると、むしろ腎機能の低下を予防につながる可能性も示された。
研究は、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載された。
「今回の研究で、特定健診受診者約30万人の大規模疫学研究のデータを活用することで、大量の飲酒が腎機能に及ぼす影響を明らかにしました。過去の研究では、大量飲酒の有害な影響が過小評価されていた可能性があります。アルコールの飲み過ぎを抑制し、適度な飲酒を推奨することによって、腎臓病の予防、さらには増加の一途を辿る透析患者数の抑制に繋がることが期待されます」と、研究者は述べている。
これまで1日にアルコール約20g (ビールロング缶1本、日本酒1合相当)を飲んでいる飲酒者は、腎機能の低下リスクが低いことが報告されているが、大量の飲酒が腎機能に及ぼす影響については、これまで小規模な研究の報告しかなく、一定の見解が得られていなかった。今回の研究は、大量の飲酒が腎機能低下のリスクとなることをはじめて明らかにした大規模疫学調査となる。
なお男性では、アルコールを「ほとんど飲まない」が30.8%、「ときどき飲む」が26.1%、「19g/日以下」が12.1%、「20~39g/日」が20.5%、「40~59g/日」が8.1%、「60g/日以上」が2.3%だった。
女性では、アルコールを「ほとんど飲まない」が73.4%、「ときどき飲む」が19.5%、「19g/日以下」が4.1%、「20~39g/日」が2.1%、「40~59g/日」が0.6%、「60g/日以上」が0.4%だった。
純アルコール量20gは、▼ビール(ロング缶) 1本 (500mL)、▼チューハイ(レギュラー缶) 1本 (350mL)、▼日本酒 1合(180mL)、▼焼酎 1杯 (100mL)、▼ワイン 2杯 (120mL)、▼ウイスキー 2杯 (60mL)に相当する。
なお、女性は男性に比べて、アルコール分解速度が遅いことが多いので、女性は男性の半分から3分の2くらいの量が適当とされている。
大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター
Alcohol Consumption and a Decline in Glomerular Filtration Rate: The Japan Specific Health Checkups Study (Nutrients 2023年3月22日)