糖尿病患者の経口セマグルチドの服薬遵守と継続はDPP-4阻害薬と同等 追加の患者教育が必要になる可能性も
経口セマグルチドとDPP-4阻害薬の服薬遵守は同等
経口セマグルチドの服用を新規に開始した2型糖尿病患者の服薬遵守と継続は、DPP-4阻害薬と同等だという、1万人超の後ろ向きコホート研究の結果が発表された。
研究は、ブリガム アンド ウィメンズ病院およびハーバード大学糖尿病・高血圧・内分泌学のAlexander Turchin氏らによるもの。研究成果は、「Primary Care Diabetes」に掲載された。
DPP-4阻害薬については、すでに1日1回の投与で忍容性と安全性の高い薬剤として確立されているが、経口セマグルチドは比較的最近になって登場した1日1回の経口投与のGLP-1受容体作動薬であり(米国では2019年に承認された)、臨床試験で安全性と有効性が確認されているものの、患者の受容性や服薬遵守に関するデータは限られていた。
そこで研究グループは、経口セマグルチドとDPP-4阻害薬の服薬遵守に関する、2型糖尿病1万465人の12ヵ月のデータセットを、2つの行政医療データベース(Merative MarketScan ResearchおよびMedicare)から収集し、両クラスの薬剤を比較した。
服薬遵守については、データベースから得た保険請求を使用し、経口セマグルチドあるいはDPP-4阻害薬によりカバーされた日数の割合(PDC)として算出し、継続持続については、最初の処方から薬剤供給がない期間が45日を超える場合をカットオフとして、その後の中止までの日数とした。
8割以上の患者が12ヵ月の時点で両剤の服薬を遵守
その結果、服薬遵守率は、経口セマグルチド群[n=5,485]では41.6%、DPP-4阻害薬群[n=4,980]では42.9%となり、各群で40%以上の患者が12ヵ月の時点で服薬を遵守していることが示された[PDC≥80%、P=0.182]。
また、服薬を9ヵ月以上継続している患者も、経口セマグルチド群では45.0%、DPP-4阻害薬群では46.3%となり、やはり同程度だった。12ヵ月時点での中止率も両群で同等だった。
なお、処方後の最初の6ヵ月間は、経口セマグルチド群ではDPP-4阻害薬群と比較して、大幅に低い服薬継続が示されたが、調査が進むにつれて経口セマグルチドの服薬継続はDPP-4阻害薬のレベルまで安定したとしている。
薬物療法は食事療法や運動療法と同様に、2型糖尿病の治療では重要であり、米国食品医薬品局(FDA)は多くの抗糖尿病薬(ADM)を承認している。そのなかで、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬はもっとも頻繁に処方され、研究されている薬剤だ。
一方で、世界保健機関(WHO)は、これらの薬剤の服薬遵守率が一部の国で低い傾向があり、その原因はおそらく社会経済、医療制度、病状や治療、患者自身の要因によるものと指摘している。
経口セマグルチドは投薬開始の最初の数ヵ月に追加の患者教育やサポートが必要
「研究の統計分析により、経口セマグルチドはDPP-4阻害薬よりも高価であるにもかかわらず、12ヵ月の患者の服薬遵守は同等であることが示された」と、研究者は述べている。
「経口セマグルチドに関しては、当初は服薬継続率が急激に低下したが、その後9ヵ月でDPP-4阻害薬と同等のレベルに安定した」。
「これは、経口セマグルチドを処方された患者は、投薬を開始した最初の数ヵ月に、追加の患者教育やサポートが必要になる可能性があることを示している」と強調している。
経口セマグルチドの自己負担額がDPP-4阻害薬と比較して大幅に高いことが影響している可能性があるが、今回の研究は後ろ向きコホート研究であるため、現時点では確認できていないとしている。
さらに、経口セマグルチドを使用している患者は、DPP-4阻害薬を使用している患者に比べ、併用しているADMが少ないことも観察され、潜在的に高い継続可能性があり、経口セマグルチドはADMとしてDPP-4阻害薬と同等かそれ以上に優れていることを指摘している。今回の調査では、DPP-4阻害薬を使用した患者の13%がGLP-1受容体作動薬を追加した。