ビタミンDの高用量サプリを摂取しても2型糖尿病リスクには影響しない 5年間のランダム化比較試験を実施
ビタミンDの高用量サプリを摂取しても2型糖尿病の発症リスクには影響しない
ビタミンDは、推奨より大幅に多い量を5年間摂取しても、高齢男性・女性の2型糖尿病の発症率に影響しないことが、60歳以上および65歳以上の男女2,271人を対象とした5年間のランダム化比較試験である「フィンランド ビタミンD(FIND)試験」で示された。
研究は、東フィンランド大学公衆衛生・臨床栄養研究所のJyrki K. Virtanen氏らによるもの。研究成果は、欧州糖尿病学会(EASD)が刊行する「Diabetologia」に掲載された。
これまで報告されている観察研究では、体内のビタミンDレベルの低い集団では、2型糖尿病のリスクが高くなることが示されている。また実験研究では、推奨量よりも高い用量のビタミンDを使用すると、糖代謝障害のある前糖尿病(prediabetes)の被験者が2型糖尿病を発症するリスクがわずかに低下することが示されている。
しかし、ビタミンDのサプリメントの使用により糖尿病の発症リスクを抑制できるかは直接的には分かっておらず、前糖尿病ではない被験者を対象としたこれまでの研究は、比較的少量のビタミンDが使用されているか短期間のものだった。
そこで研究グループは、健康な高齢者集団での、2種類の異なる用量のビタミンD3補給が、2型糖尿病の発症率に及ぼす影響を調査した。
2012~2018年に実施したFIND試験では、60歳以上の男性2,495人と65歳以上の女性2,495人を対象に、1日に1600IUあるいは3200IUのビタミンD3を摂取する群と、プラセボ群に無作為に割り付け、5年間追跡して調査した。研究開始時にすでに糖尿病治療薬を使用していた224人の参加者は除外された。
参加者から、ライフスタイル、栄養、既往症、その危険因子に関する包括的な情報を収集し、フィンランド国民健康データからもデータを取得。無作為に選ばれた被験者のおよそ5分の1は、より詳細な検査を行うため血液サンプルが採取された。
平均4.2年間の追跡期間中に、105人が2型糖尿病を発症。2型糖尿病の発症率のプラセボ群(n=760)との比較は、ビタミンD群(1600IU/日摂取、n=744)のハザード比(HR)は0.81[95%CI 0.50~1.30]、ビタミンD群(3200IU/日摂取、n=767)のHRは0.92[95%CI 0.58~1.45]となった。
ビタミンD群では、わずかに2型糖尿病の発症率が低下したものの、群間の症例数には統計的な有意差はなかった。2つのビタミンD群を組み合わせてプラセボ群と比較すると、HRは0.86[95%CI 0.58~1.29]となった。
505人を対象としたサブ試験では、体内のビタミンDの状態をあらわす、血中25-ヒドロキシビタミンD3(25(OH)D3)の濃度の平均は、ベースラインでは74.5nmol/Lで、12ヵ月後にビタミンD群(1600IU/日)は99.3nmol/L、ビタミンD群(3200IU/日)は120.9nmol/Lに上昇した。プラセボ群は72.6nmol/Lと変化はなかった。
ビタミンDが血糖値、インスリン値、BMI、ウエスト周囲径に与える影響も、研究の最初の2年間に調査されたが、群間で有意差は認められなかった。
「FIND研究の結果は、推奨量よりも高用量のビタミンDを摂取しても、前糖尿病ではなく、ビタミンDの状態がすでに良好な人の場合、2型糖尿病の発症リスクの有意な低下には影響は及ぼさないことが示された。これまでのところ、前糖尿病ではないがビタミンD欠乏症のある患者の場合、高用量のビタミンDのサプリメントが、2型糖尿病の予防に有効かを調査した研究データはない」と、研究者は述べている。
研究は、フィンランド研究評議会、東フィンランド大学、ユホ ヴァイニオ財団、フィンランド心臓血管研究財団、フィンランド糖尿病研究財団、フィンランド文化財団、フィンランド医学教育財団の資金提供を受けて実施された。
Taking high-dose vitamin D supplements for five years did not affect the incidence of type 2 diabetes (東フィンランド大学 2024年12月3日)
The effect of vitamin D3 supplementation on the incidence of type 2 diabetes in healthy older adults not at high risk for diabetes (FIND): a randomised controlled trial (Diabetologia 2024年12月2日)