GLP-1受容体作動薬に脱毛症・自殺念慮などのリスク? 米FDAが潜在的な有害事象について調査

2024.01.17
FDAがGLP-1RAの潜在的な有害事象について調査

 米食品医薬品局(FDA)が1月2日に公表した、医薬品の有害事象に関する四半期報告書(2023年7~9月)によると、血糖管理以外に減量目的でも使用が拡大しているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関して、脱毛症、誤嚥、自殺念慮のリスクについて調査していることが明らかにされた。

 ただし、これらのうち自殺念慮についてFDAは1月11日に、「自殺念慮および自殺行動との因果関係のエビデンスはみつかっていない」との、予備評価の結果を追加発表している。

 脱毛症、誤嚥との関連も含め、FDAは今後も引き続き調査を継続するとしており、最終的には因果関係が否定される可能性があるものの、新たな研究の実施や添付文書の改訂が必要になる可能性もある。

 GLP-1RAは、オゼンピック、ウゴービ、マンジャロ、Zepboundなどの商品名で流通しており、血糖管理または肥満症治療の目的で使用されている。FDAがこれらの薬剤の潜在的な有害事象の可能性について報告を行ったのは、今回がはじめてのことではない。2022年4~6月の四半期報告書では一部のGLP-1RAで腸閉塞のリスクの可能性が示され、CBSニュースによると、その報告書の公表以降に添付文書の改訂がなされた製品もある。

 今回のFDA報告書やCBSニュースによると、昨年9月までに、オゼンピックやウゴービなどの主成分であるセマグルチド、またはマンジャロやZepboundの主成分であるチルゼパチドを使用している患者で、自殺念慮または自殺行動の報告が201件、脱毛症は422件以上、誤嚥は18件の報告があり、これら以外にも、潜在的な関連性の可能性の考えられる、まれな有害事象が報告されている。

 なお、前述のとおり自殺念慮と自殺行動については、予備評価の結果、関連を示すエビデンスはみつかっていないながら、FDAは「GLP-1RA使用開始後に、うつ病の発症またはうつ状態の悪化、自殺念慮、気分や行動の変調を来した場合は医療専門家に相談するように」とのアナウンスをしている。

 GLP-1RAのメーカーの1社であるノボノルディスク社の広報担当者は、CBSニュースの取材に対して、「FDAが医薬品モニタリング活動の一環として、GLP-1RAに関連するいくつかの潜在的なシグナルを評価しており、その進行状況をウェブに掲載していることは承知している。当社は、当社のGLP-1RAが、資格を有する医療専門家の下で適正に使用される場合、安全かつ有効であると確信している」と述べている。

 また、やはりGLP-1RAのメーカーであるイーライリリー社の広報担当者は、同じくCBSニュースの取材に対して、「FDAはGLP-1RAの潜在的なリスクに関するデータを検討している。患者の安全が当社の優先事項であり、これらの潜在的なシグナルの評価に関してFDAに協力している」と話している。

[HealthDay News 2024年1月4日]

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