低強度運動が2型糖尿病による認知機能の低下を改善 骨格筋由来のmiRNA分泌が関与 群⾺⼤学
群⾺⼤学は、4週間の低強度運動が空間記憶機能を改善させ、その運動効果に⾻格筋由来エクソソームのmiRNA(miR-200a-3p)の分泌が関わることを、2型糖尿病モデルマウスを⽤いて明らかにした。
低強度運動は、2型糖尿病の認知機能を改善することが知られている。この研究で、4週間の低強度運動が2型糖尿病の空間記憶機能を改善するとともに、miR-200a-3pの分泌を増加させることを新たに⾒出した。
2型糖尿病の海⾺機能を改善する低強度運動効果にmiR-200a-3pの分泌が関わっており、2型糖尿病の認知機能を改善する最適なライフスタイルや新たな治療法に発展できる可能性がある。

低強度運動による認知機能の改善に⾻格筋由来のmiRNA分泌が関与
2型糖尿病は、末梢の諸器官のみならず脳にも悪影響を及ぼし、海⾺が司る認知機能の低下を引き起こす。同グループはこれまでに、低強度運動を習慣的に行うと、2型糖尿病モデルマウスの空間記憶機能を改善することを⽰していた。
習慣的な低強度運動は、2型糖尿病により低下した認知機能を、海⾺の乳酸輸送担体であるMCT2やmiRNA(miR-200a-3p)のとともに改善することが知られている。
MCT2(モノカルボン酸輸送担体2)は、神経細胞への乳酸取り込みを担っており、神経細胞は乳酸を神経活動のエネルギー基質などとして利⽤しているため、MCT2の発現・機能の低下は、認知機能の低下につながることが知られている。
また、諸器官の細胞から分泌される細胞外⼩胞であるエクソソームに内包されるmiRNAは、⽣体の⽣理機能適応の⼀要因として注⽬されている。miRNAは、標的遺伝⼦の転写産物に結合して、mRNAの不安定化やタンパク質合成の調節に関わる1本鎖RNA分⼦。
群⾺⼤学の研究グループは今回の研究により、この運動効果とともに、腓腹筋由来のエクソソームに含まれるmiR-200a-3pの分泌が増加することを確認した。

さらに、miR-200a-3p模倣体の投与が、運動効果と同様に2型糖尿病モデルマウスの空間記憶機能を改善することも確認した。
研究グループは今回、2型糖尿病モデルマウス(ob/obマウス)と健康なマウス(C57BL/6マウス)に4週間の低強度運動群(ob/obマウス︓5.0 m/min、C57BL/6マウス︓7.0 m/min)もしくは安静群(0 m/min)に分けて比較した。
運動の時間や頻度は、30分/⽇、5⽇/週とした。運動介⼊の最終週に併⾏して、すべてのマウスにモリス⽔迷路試験を課して、空間記憶機能を評価した。

「今後、⾻格筋由来エクソソームmiR-200a-3pの関与をより詳細に探ることで、2型糖尿病の認知機能を改善する最適なライフスタイルや新たな治療法の発展に貢献することが期待される」と、研究者は述べている。
研究は、群⾺⼤学共同教育学部の島孟留准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The FASEB Journal」にオンライン掲載された。
群⾺⼤学共同教育学部
群⾺⼤学共同教育学部保健体育講座
共同教育学部保健体育講座 運動⽣理学研究室
Muscle-Derived miR-200a-3p Through Light-Intensity Exercise May Contribute to Improve Memory Dysfunction in Type 2 Diabetic Mice (FASEB Journal 2025年4⽉10⽇)