経口GLP-1受容体作動薬「Orforglipron」の第3相試験 HbA1cは平均1.3~1.6%低下し体重は平均7.9%減少 2型糖尿病の成人患者が対象

2025.04.22

 イーライリリー・アンド・カンパニーは、食事療法および運動療法のみで血糖管理が不十分な2型糖尿病の成人患者を対象に、経口GLP-1受容体作動薬「Orforglipron」の安全性と有効性を評価する第3相ACHIEVE-1試験を実施し、このほど肯定的なトップライン結果を発表した。

 同剤はこの第3相試験で、各群の平均HbA1cを1.3%から1.6%低下させ、有意な有効性が示された。主な副次評価項目のひとつとして検討された体重減少量では、最高用量群で平均7.3kg(16.0ポンド、7.9%)の減少が示された。

 同試験での「Orforglipron」の全般的な安全性と忍容性のプロファイルは、注射剤のGLP-1受容体作動薬と同様だった。

経口GLP-1受容体作動薬「Orforglipron」の第3相試験で肯定的なトップライン結果

 「Orforglipron」は、飲食および飲水の制限なく服用することが可能なはじめての経口GLP-1受容体作動薬。中外製薬が創製し、2018年にリリーがライセンス供与を受けた。両社は、同分子の前臨床薬理データを共同で発表し、現在は2型糖尿病治療薬として、また肥満あるいは過体重で体重に関連する健康障害が1種類以上ある成人の体重管理薬として、第3相試験を実施中。

 「ACHIEVE-1試験は、糖尿病と肥満の患者を対象としてOrforglipronの安全性と有効性を検討する7件の第3相臨床試験のうちの最初の試験。今回、期待通りの安全性、忍容性、血糖管理と体重減少の達成が示された。今年中に得られる予定の追加のデータ報告にも期待している。Orforglipronは、1日1回服用する簡便な経口製剤として新たな選択肢となりえるもので、承認されれば、製造が容易で大規模な販売が可能な製剤となる」と、リリーでは述べている。

 「Orforglipron」の初の第3相試験であるACHIEVEプログラムでは、主要評価項目である第40週でのHbA1c値減少幅がプラセボ群を上回り、有効性estimandを用いた評価では、HbA1cはベースラインの8.0%から平均で1.3~1.6%低下した。最高用量を服用した群の65%以上が、主な副次評価項目である、HbA1cが6.5%以下となった。

 また、主な副次評価項目として検討された体重減少で、「Orforglipron」の最大用量群では平均7.3kg(16.0ポンド、7.9%)の体重減少がみられた。体重の変化は試験終了時にプラトー(安定期)に到達しておらず、最大の体重減少には達していなかったと考えられるとしている。

経口GLP-1受容体作動薬「Orforglipron」の第3相ACHIEVE-1試験の
肯定的なトップライン結果

 治療方針estimandを用いた評価では、「Orforglipron」の各用量群とも、統計学的に有意なHbA1c低下が示された。体重に関する主な副次評価項目について行った治療方針estimandを用いた評価でも、12mg群と36mg群で統計学的に有意な体重減少が認められた。

HbA1c低下 1.2% (3mg)、1.5% (12mg)、1.5% (36mg)、0.4% (プラセボ)
体重減少率 4.5% (3mg)、5.8% (12mg)、7.6% (36mg)、1.7% (プラセボ)
体重減少量 4.2kg (9.3 lbs; 3mg)、5.2kg (11.5 lbs; 12mg)、7.2kg (15.8 lbs; 36mg)、1.5kg (3.4lbs; プラセボ)

 ACHIEVE-1試験での「Orforglipron」の全般的な安全性プロファイルは、これまでに確立されたGLP-1受容体作動薬クラスと同様だった。もっとも高頻度で報告された有害事象は消化器関連事象で、そのほとんどは軽度~中等度だったとしている。Orforglipron投与例(3mg群、12mg群、36mg群)で比較的高頻度で認められた有害事象は、下痢 (19%、21%、26%、対プラセボ群9%)、悪心 (13%、18%、16%、対プラセボ群2%)、消化不良(10%、20%、15%、対プラセボ群7%)、便秘 (8%、17%、14%、対プラセボ群4%)、嘔吐(5%、7%、14%、対プラセボ群1%)だった。有害事象により投与中止に至った被験者の割合は、「Orforglipron」投与例では6%(3mg)、4%(12mg)、8%(36mg)、でプラセボ群では1%だった。肝機能に関する安全性シグナルは認められなかった。

 ACHIEVE-1の試験結果は、第85回米国糖尿病学会学術集会(ADA 2025)で発表され、査読論文誌に発表する予定としている。第3相ACHIEVE臨床試験プログラムのさらなる結果は今年後半に発表される予定で、「Orforglipron」による体重管理を評価する第3相ATTAIN臨床試験の結果もあわせて発表される予定。

 リリーは、今年末までに体重管理を用途とする「Orforglipron」の承認申請を世界各地の規制当局に提出する予定で、2型糖尿病治療薬としての承認申請は2026年から開始する予定としている。

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