GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病・CKD患者の腎疾患・心血管疾患・死亡リスクを大幅に減少 欧州腎臓学会

2024.05.29
 GLP-1受容体作動薬(セマグルチド)が、2型糖尿病および慢性腎臓病(CKD)のある患者の主要な腎疾患イベント、心血管転帰および死亡リスクを大幅に減少したというFLOW研究の成果が、第61回欧州腎臓学会(ERA)学術大会で発表された

 「GLP-1受容体作動薬による治療のベネフィットと安全性について、2型糖尿病および慢性腎臓病の患者の腎臓、心臓、死亡のリスクを減少する重大な臨床アウトカムが示された。GLP-1受容体作動薬の強力な潜在的価値が示唆された」と、研究者は述べている。

GLP-1受容体作動薬が腎疾患イベント、心血管転帰および死亡リスクを軽減

 GLP-1受容体作動薬(セマグルチド)が、2型糖尿病および慢性腎臓病(CKD)のある患者の主要な腎疾患イベント、心血管転帰および死亡リスクを大幅に軽減したことが、FLOW(Evaluate Renal function with Semaglutide Once Weekly)研究で明らかになった

 研究成果は、5月にストックホルムで開催された第61回欧州腎臓学会(ERA)学術大会で発表されるとともに、「New England Journal of Medicine」に掲載された。

 FLOW研究は、2型糖尿病患者とCKDのある患者を対象とした二重盲検・無作為化・プラセボ対照第3相試験。研究グループは今回、eGFR(推算糸球体濾過量)が50~75mL/min/1.73m²かつUACR(尿中アルブミン/クレアチニン比)が300~5,000mg/g、あるいはeGFRが25~50mL/min/1.73m²かつUACRが100~5,000mg/gの患者を対象とした。

 今回対象となったのは、2型糖尿病およびCKDのある患者3,533人、追跡期間の中央値は3.4年で、セマグルチド1.0mgを週1回投与するかプラセボを投与した。主要エンドポイントを腎転帰、とくに腎不全、腎機能の実質的な喪失、および腎臓病による死亡リスクとして、セマグルチドの有効性と安全性を評価した。

 その結果、セマグルチド群はプラセボ群と比較し、複合主要エンドポイントである腎臓転帰や心血管および腎臓病を原因とする死亡のリスクが24%減少した[初回イベント 331件 対 410 件、HR 0.76、95%CI 0.66~0.88、P=0.0003]。このリスク減少は、腎臓特異的死亡と心血管死亡の両方の転帰にわたり一貫してみられた。

 主要エンドポイントでの腎臓の特異的複合転帰のリスクも21%減少し[HR 0.79、95%CI 0.66~0.94]、心血管原因による死亡リスクは29%減少した[HR 0.71、95%CI 0.56~0.89]。

 副次エンドポイントでも、セマグルチドによる改善が示され、総eGFRの低下は年間に1.16mL/min/1.73m²遅くなり[P<0.001]、主要な心血管イベントのリスクは18%減少し[HR 0.82、95%CI 0.68~0.98、P=0.029]、全死因による死亡リスクは20%減少した[HR 0.80、95%CI 0.67~0.95、P=0.01]。

 また、重篤な有害事象が報告された割合は、セマグルチド群の方がプラセボ群よりも低かった[49.6% 対 53.8%]。

GLP-1受容体作動薬による治療は腎臓と心血管の保護に新たな道を提供

 「2型糖尿病および慢性腎臓病患者におけるセマグルチドの使用は、重大な腎臓転帰のリスクを低下させ、心血管イベント、心血管死、全死因死のリスクを減少することが示された」と、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学医療・健康学部長であるVlado Perkovic教授は述べている。

 「GLP-1受容体作動薬による治療のベネフィットと安全性について、2型糖尿病および慢性腎臓病の患者の腎臓、心臓、死亡のリスクを減少する重大な臨床アウトカムが示された。GLP-1受容体作動薬の強力な潜在的価値が示唆された」。

 「GLP-1受容体作動薬による治療の有効性を示したことは、重篤な有害事象が少なかったこともあり、2型糖尿病と慢性腎臓病、およびそれらに関連する合併症という困難に直面している世界中の数百万人もの患者に希望をもたらすと期待される」としている。

 世界中で8億人以上がCKDに罹患しており、とくに2型糖尿病患者のあいだで増えている。CKDは腎不全、心血管イベント、死亡の重大なリスクをもたらし、現在の治療は、腎臓の保護と心血管リスクの軽減の効果が実証されているものの、多くの患者は腎機能の低下や転帰不良を経験し続けている。CKDと2型糖尿病の予防と治療に関する研究が必要とされているとしている。

 「これらの発見は、糖尿病関連合併症のリスクが高い患者の治療戦略を再構築するうえで大きな期待をもたらし、腎臓と心血管の保護に関する新たな道を提供するものだ」としている。

Semaglutide significantly reduces risk of major kidney disease events, cardiovascular outcomes and mortality in patients with type 2 diabetes and chronic kidney disease, groundbreaking study reveals (欧州腎臓学会 2024年5月24日)
Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2024年5月24日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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