肥満薬候補を発見 脂質燃やす褐色脂肪細胞を活性化 熱産生を亢進し肥満になりにくい体に 岩手医大

2024.02.06
 岩手医科大学は、脂肪細胞での熱産生を亢進させる効果のある化合物を同定したと発表した。これにより、全身の基礎代謝が上がり、体内の糖質や脂質が消費されやすくなるという。

 肥満・糖尿病モデルマウスにこの化合物を投与したところ、体重の有意な減少が認められ、耐糖能が改善し、インスリン感受性が亢進した。さらに、肝臓での脂肪の含量が少なく、脂肪肝が軽減した。

 この化合物により、食事をとっても肥満になりにくい体質になり、吐き気などの副作用もないため、新規の肥満治療薬として期待されるとしている。

熱産生を上げることで肥満になりにくい体質にする肥満薬候補を発見

 岩手医科大学は、脂肪細胞での熱産生を亢進させる効果のある化合物を同定したと発表した。この化合物は、褐色脂肪細胞での熱産生に関与する脱共役タンパク質1(UCP1)を活性化させ、全身の基礎代謝を上げ、体内の糖質や脂質が消費されやすくするとしている。

 UCP1は、ミトコンドリアの内膜に局在するタンパク質で、ミトコンドリア膜間のプロトン勾配を利用した熱産生の機能を担っており、エネルギー消費を促進する。

 研究グループは今回、褐色脂肪細胞がUCP1を強く発現し、熱エネルギーを産生することに着目。この脂肪細胞の数を増やし活性化することができれば、肥満およびメタボリックシンドロームの発症や病態の悪化を軽減できると考えられた。

 今回の研究で、Ucp1遺伝子Exon領域にルシフェラーゼを組み込んだ脂肪細胞を利用し、4,800種類の化合物セットから、ハイスループット法による化合物スクリーニングを行った。化合物ライブラリーは、東京大学創薬機構の化合物ライブラリー(Core Library)を利用し、コントロールとしてロシグリタゾンを使用した。

 肥満・糖尿病モデルマウスにこの化合物を投与したところ、コントロールマウス群に比べて、体重の有意な減少が認められ、耐糖能が改善し、インスリン感受性が亢進した。さらに、肝臓での脂肪の含量が少なく、脂肪肝が軽減した。

 また、化合物を投与したマウスは、コントロールマウスと較べて、酸素消費量が高く、基礎代謝が亢進していることが確認できた。

マウスへの化合物投与による体重変化、糖代謝、脂肪肝、基礎代謝への影響の検討

出典:岩手医科大学、2024年

 発見した化合物は、体重の減量につながるだけでなく、肥満やメタボリックシンドロームに関連する2型糖尿病や脂質異常症、脂肪肝など、さまざまな疾患への治療応用も期待されるとしている。

 研究は、岩手医科大学内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科分野の小野寺謙氏、長谷川豊氏、石垣泰教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Obesity」に掲載された。

岩手医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科分野
A newly identified compound activating UCP1 inhibits obesity and its related metabolic disorders (Obesity 2023年11月17日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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