【新型コロナ】コロナ禍で「在宅医療」希望者が増加 「入院中の面会制限」が理由 医師対象の調査
訪問診療を行っている責任医師を調査 31施設のデータを解析
新型コロナの「第5波」(2021年7~9月)では、それまでの状況を大きく上回る感染爆発となった。これにより、感染者を受け入れる病床を確保するために、一般入院の病床数が減ったり、入院中の面会が制限され、以前は入院治療を受けられていた慢性疾患を抱える患者が、在宅で療養することが多くなった。しかし、在宅医療(訪問診療)を希望する患者数の実態や、その変化の理由については明らかになっていなかった。
そこで筑波大学の研究グループは、2021年8月に国内で訪問診療を行っている医療機関の医師を対象に、新型コロナの流行前と比較した在宅医療(訪問診療)利用状況の変化の実態や理由などを調査した。
研究では、訪問診療を行っている国内37施設の責任医師(院長や管理者など)を対象に、新型コロナの流行前と比べた「依頼される在宅患者数」「病状」「患者・家族が在宅医療(訪問診療)を希望する理由」などについて、2021年8月に無記名のWebアンケート調査を実施した。なお、この時期は、21都道府県で緊急事態宣言が発令されていた。
33施設からの回答のうち、未入力データがあった2施設を除いた31施設のデータを解析した。そのうち14施設は人口10万人未満の地域にあり、9施設では医師1人体制で訪問診療を担当していた。
9割以上が「入院中の面会制限」を理由に在宅医療を希望
解析した結果、新型コロナの流行前と比べて「自宅で最期を迎える患者が増えた」(74.2%)、「新たに在宅医療(訪問診療)を希望する患者が増えた」(71.0%)という傾向が強まっていることが分かった。
その理由として、回答した医師の93.5%が「入院中の面会制限があるため、多くの患者、家族が在宅医療(訪問診療)を希望している」と考えていることが示された。
また、54.8%は「病院の医師、看護師に勧められて希望した」、41.9%は「病院内でCOVID-19に感染することを心配して希望した」とそれぞれ回答した。
この結果は、地域の人口や診療所・クリニックの医師数による違いがみられなかったことから、日本での一般的な傾向と考えられる。「新型コロナの流行前と比べて増えている、在宅医療(訪問診療)を希望する患者に対応している在宅医療従事者の支援や、入院中の面会制限の運用改善の検討が必要であることが示唆されます」と、研究者は述べている。
研究は、筑波大学医学医療系の濵野淳氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Research Notes」に掲載された。
筑波大学 医学医療系
Changes in home visit utilization during the COVID-19 pandemic: A multicenter cross-sectional web-based survey (BMC Research Notes 2022年7⽉7⽇)