新規創傷治癒材「シルクエラスチン創傷用シート」が承認 糖尿病などによる慢性創傷を治癒 京都大学病院など

2025.05.20

 三洋化成工業は、京都大学医学部附属病院形成外科の森本尚樹教授らとの共同研究により、新規の創傷治療材料「シルクエラスチン創傷用シート」を開発し、このほど薬事承認を取得したと発表した。

 慢性創傷は、糖尿病、静脈還流障害、床ずれ、膠原病などさまざまな原因で引き起こされる。同治癒材により、治りにくい慢性創傷を、細菌感染を助長させることなく治療でき、治療期間の短縮や痛みの軽減を通して患者のQOLの向上に貢献することが期待されるとしている。

治りにくい慢性創傷(難治性皮膚潰瘍)を治癒する創傷用シート

 三洋化成工業は、京都大学医学部附属病院形成外科の森本尚樹教授らとの共同研究により、新規の創傷治療材料「シルクエラスチン創傷用シート」を開発し、このほど薬事承認を取得したと発表した。

 同製品は、糖尿病、静脈還流障害、床ずれ、膠原病などを原因とした慢性創傷の治癒を目的とした、新しい治癒材で、日本初の遺伝子組み換え技術を用いた医療機器となる。

 なお同治癒材は、科研製薬に日本国内での独占販売権を付与しており、同社が販売を担当するという。2025年秋以降に日本国内で販売開始する予定としている。

 「慢性創傷」(難治性皮膚潰瘍)は、何らかの原因によって起こる創傷であり、通常の治療では治りにくい。糖尿病、静脈還流障害、床ずれ、膠原病などさまざまな原因で引き起こされ、やけどやケガ、皮膚がんの切除などで皮膚が欠損した場合にも起こる。

 創傷の治療は、創面を湿潤に保ちながら、細菌感染を防ぐことが重要となるが、慢性創傷は治癒に時間がかかるため、細菌感染のリスクが高く、感染すると治癒がさらに遅れるという悪循環に陥りやすい。

 新規の創傷治療材料「シルクエラスチン創傷用シート」は、そのような治りにくい慢性創傷の治癒を目的に、三洋化成が京都大学医学部附属病院とともに開発を進めてきた新しい治癒材。これまでの臨床試験のデータでは、従来の治療で効果が得られにくいような慢性創傷でも、細菌感染を助長させることなく治療できることが示されている。

シルクエラスチン創傷用シート
シルクエラスチン創傷用シートの適用
出典:京都大学、2025年
 シルクエラスチンは、シルクフィブロイン*1の部分配列と、エラスチン*2の部分配列とを組み合わせ、遺伝子組み換え技術によって作製された人工タンパク質。シルクエラスチン水溶液は加温するとタンパク質の構造が変化し、水分を含んだ状態で固まる(ゲル化する)という特徴があり、複雑な創傷面に密着して細胞増殖の環境を作りだす。
*1 シルクフィブロイン:カイコが産生する繊維状のタンパク質であり、シルクの原料になる。
*2 エラスチン:弾性線維を構成する主要なタンパク質。皮膚や肺、動脈が伸縮するのは弾性線維の働きによる。

 下腿難治性皮膚潰瘍の患者を対象に、京都大学病院で2018年2月~12月に、同治癒材を用いた医師主導治験を行った結果、安全性を確認し、また2021年7月より実施していた企業治験でも、安全性と有効性の両面で良好な結果が得たとしている。

 臨床試験は、いずれも日本医療研究開発機構(AMED) 医工連携イノベーション推進事業の支援を受けて実施された。

 「シルクエラスチン創傷用シート」は、科研製薬に日本国内での独占販売権を付与しており、同社が販売を担当するという。2025年秋以降に日本国内で販売開始する予定としている。

販売名 シルクエラスチン創傷用シート
承認番号 30700BZX00089000
一般名称 吸収性創傷被覆・保護材
使用目的又は効果 全層創傷及び部分層創傷の治癒を目的に使用する。特に、既存治療に奏効しない難治性創傷にも適応となる。

京都大学医学部附属病院形成外科

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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