フレイルがある高齢者は肺炎に1.9倍かかりやすく、1.8倍重症化しやすい 予備群でも肺炎リスクは1.3倍

2021.08.03
 新潟大学は、65歳以上の高齢者でフレイルがある場合、フレイルがない高齢者と比べて、肺炎に1.9倍かかりやすく、肺炎の重症化(入院措置になりやすい)のリスクも1.8倍に上昇することを明らかにした。
 また、フレイルの前段階にある⾼齢者でも、フレイルなしの⾼齢者に比べ、肺炎に1.3倍かかりやすいとしている。

フレイルの高齢者は肺炎リスクが高いのか?

 フレイルとは、加齢や病気による⼼⾝の衰えにより要介護になるリスクが⾼い状態をいう。

 肺炎は日本を含む世界中で高齢者の死因の上位を占める。これまでの研究で、寝たきりなどの要介護状態の高齢者では、誤嚥性肺炎が起こりやすいことが分かっている。しかし、要介護状態ではないがフレイルの高齢者が、肺炎になりやすく重症化しやすいのかについてはよく分かっていなかった。

 新潟大学の研究グループは、日本老年学的評価研究機構(JAGES)が2016年10月~2017年1月の期間に行った、健康と暮らしについての約18万人対象のアンケート調査のデータを解析した。

 要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者が、過去1年間で肺炎にかかったか、また、肺炎かインフルエンザにかかった後に肺炎で入院したかを調べた。

 フレイルの判定は、厚生労働省が開発した基本チェックリストにより行った。フレイル以外で肺炎に関係する可能性のある年齢、性、教育年数、所得、家族構成、婚姻状況、喫煙、肺炎にかかりやすく重症化しやすくなる病気(糖尿病、呼吸器疾患、心疾患、腎臓疾患)、肺炎球菌予防接種等の影響を統計学的な方法で取り除いた。

フレイル前段階の高齢者でも1.3倍肺炎にかかりやすい

 その結果、フレイルの高齢者は、フレイルではない高齢者に比べ、肺炎に1.9倍かかりやすい可能性があることが明らかになった。また、フレイルの前段階にある高齢者も、フレイルではない高齢者に比べ、肺炎に1.3倍かかりやすいことも分かった。

 フレイルの高齢者は、フレイルではない高齢者と比べ、肺炎で入院しやすい可能性も1.8倍に上昇することも明らかになった。

出典:新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野、2021年

 また、基本チェックリストにより、口腔機能低下またはうつ状態に該当した高齢者は、肺炎にかかりやすく、日常生活動作の低下または閉じこもりに該当する高齢者でも、肺炎で入院しやすいことが分かった。*

 *「閉じこもり」とは、1⽇のほとんどを家で過ごし、週に1回も外出しないこと。閉じこもりがちな⽣活が続くと、筋⼒や⾷欲が低下し、認知症やうつなどになりやすくなる。

 さらに、運動機能低下または低栄養状態に該当する高齢者も、肺炎になりやすく、かつ肺炎で入院しやすいことが分かった。

フレイルを予防することが、肺炎予防にもつながる

 フレイルを調べることで、高齢者が肺炎にかかりやすいのか、肺炎が重症化しやすいのかが分かる可能性がある。

 「フレイルを予防することが、肺炎予防にもつながる可能性があります。今後は、⾼齢者で重症化しやすいインフルエンザや新型コロナウイルス感染症にもフレイルが関係しているのか等を明らかにしていく予定です」と、研究グループは述べている。

 研究は、新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野の齋藤孔良助教、菖蒲川由郷特任教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific reports」に掲載された。

新潟大学大学院医歯学総合研究科国際保健学分野
JAGESプロジェクト(日本老年学的評価研究)
Frailty is associated with susceptibility and severity of pneumonia in older adults (A JAGES multilevel cross-sectional study)(Scientific reports 2021年4月12日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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