【新型コロナ】国産の不活化ワクチン「KD-414」の国内第1/2相試験で良好な結果 目標時期を1年間前倒し KMバイオロジクス
国産ワクチンを1日も早く国内に供給し、COVID-19の早期収束に貢献するために、実用化の目標時期を当初予定していた2023年度中から2022年度中に1年間前倒しし、早期実現を目指すとしている。
国産の不活化ワクチン「KD-414」の国内第1/2相試験
安全性・有効性を期待できる結果に
「KD-414」は、ウイルスを加工して毒性をなくした従来型の不活化ワクチンで、KMバイオロジクスが2020年5月から、日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、研究開発を分担した国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所と開発を開始したもの。
同試験は、KD-414の安全性および免疫原性の評価を目的に、2021年3月に開始したもの。国内で20歳以上65歳未満の健康成人105名および65歳以上の健康な高齢者105名を対象に、H群(高用量)、M群(中用量)、L群(低用量)およびプラセボ群を設定し、3つの異なる用量のKD-414をそれぞれ1回0.5mLずつ2回、27日の間隔をおいて筋肉内接種を行った。
安全性については、成人・高齢者ともにすべての用量群で忍容性が確認され、高い安全性が示された。1回目接種後から2回目接種28日後までに生じた副反応として、接種部位の疼痛などは認められたが、日常生活に支障がある重度の副反応は、回復性の発熱1名1件のみであり、一般的な不活化ワクチンの想定を超えるものではなかったとしている。
免疫原性については、H群で最も高い中和抗体陽転率および中和抗体価が認められ、一定の有効性が期待できる結果が示された。また、中和抗体陽転率および中和抗体価共に若い年齢層ほど高くなる傾向が認められた。
同試験で、「KD-414」の安全性・有効性が期待できる結果を得られたので、同社は「最終段階の臨床試験を速やかに開始すべく準備を進める」としている。
不活化ワクチンで新たな選択肢を提供
変異株に対しても早期供給を可能に
国産ワクチンを1日も早く国内に供給し、COVID-19の早期収束に貢献するために、実用化の目標時期を当初予定していた2023年度中から2022年度中に1年間前倒しし、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協力しながら早期実用化を目指すとしている。
生産体制については、すでに厚生労働省が実施する「ワクチン生産体制等緊急整備事業」に採択されており、2022年4月には生産体制を整備できる見通しだ。KMバイオロジクスは今後、Meiji Seikaファルマと協力して、国産ワクチン「KD-414」の開発を加速するとしている。
「不活化ワクチンは、インフルエンザワクチンや日本脳炎ワクチンなど、長年の使用実績がある従来型のワクチン。KD-414は、国内ですでに承認された新規モダリティのワクチン接種を見合わせている人に対して、新たな選択肢を提供することを可能にする。より高い安全性が求められる幼児や小児などの若年層、さらには妊婦に対しても接種できるよう、安全で有効な不活化ワクチンの開発を目指す」と、同社では述べている。
さらに、現在、新たな変異株が世界各地で確認されており、国内でもB.1.617.2系統の変異株(デルタ株)への置き換わりが進んでいる。こうした状況をふまえ、同社はすでにマウスを用いてデルタ株などの変異株に対する「KD-414」の薬効評価を進めており、今後、第1/2相臨床試験で採取した臨床検体を用いて変異株に対する薬効評価を行う計画としている。
今後は、既存のワクチンでは効果が落ちるような変異株および新たなコロナウイルスに対しても早期のワクチン供給が可能となるよう、「KD-414」をプロトタイプワクチンとしての承認申請の可能性についても引き続き検討する。
プロトタイプワクチンは、新規のウイルス株に対して共通の基盤となるワクチン(製法)。パンデミック時に必要に応じて製造株を変更することを前提として、パンデミックの発生前に、ワクチン製造のモデルとなるウイルスを用いて製造・開発される。
KMバイオロジクス
新型コロナワクチンの開発状況について(厚生労働省)