口腔機能が低下する「オーラルフレイル」を5項⽬で簡単にチェック 日本老年医学会などが合同ステートメントを発表

2024.06.04
 口の機能が健常である状態と、口の機能が低下した状態の中間にあるのが「オーラルフレイル」。咬みにくさ・食べこぼし・むせ・滑舌の低下など、「口の衰え」の症状がある人は注意が必要になる。

 日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年歯科医学会は、新たなオーラルフレイルのチェック項⽬を提唱。5項⽬のうち2項⽬以上に該当する人は、オーラルフレイルに該当するという。3学会は合同ステートメントを発表した。

 オーラルフレイルがあることは、その後の1年間の転倒の増加とも関係していることが、大阪公立大学の研究でも明らかになった。

オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント
新たなオーラルフレイルのチェック項⽬を提唱

 日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年歯科医学会は、「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」を発表した。

 3学会は、新たなオーラルフレイルのチェック項⽬「OF-5」(Oral frailty 5-item Checklist)を提唱している。5項⽬のうち2項⽬以上に該当する人は、オーラルフレイルに該当する。

 検査機器がなくてもセルフチェックが可能で、リスクのある個人や、歯科職種以外の多職種が評価できるのが特徴だ。

オーラルフレイル チェック項⽬「OF-5」
2つ以上があてはまる場合は「オーラルフレイル」

  •  自身の歯は何本ありますか?
  •  半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか?
  •  お茶や汁物などでむせることはありますか?
  •  口の渇きが気になりますか?
  •  ふだんの会話で、言葉をはっきりと発音できないことがありますか?

出典:日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年歯科医学会、2024年

 「この合同ステートメントの目的は、オーラルフレイルの概念と定義をより理解しやすく、かつ評価しやすくすることで、とくに口腔機能に関するフレイルの啓発、および多職種連携の推進することです」と、研究者は述べている。

 今後は、歯科の医療専⾨職が中心となり、多職種の協働により対応し、食べる・飲み込む・話すなどさまざまな「口の機能の障害」、および身体的フレイル・社会的フレイル・サルコペニア・低栄養といった次のレベルの障害の発症や重症化を食い止めることにつなげたいとしている。

オーラルフレイルのある人は転倒事故の発生率が1.6倍

 大阪公立大学は、噛む力や飲み込む力が衰えるオーラルフレイルがあることは、その後の1年間の転倒の増加と関係していることを明らかにした。

 これまでに、全身の筋量・筋力低下とオーラルフレイルは関連することが報告されているが、オーラルフレイルと転倒リスクの関連についてはよく分かっていなかった。

 口の機能が健常である状態と、口の機能が低下した状態の中間にあるのが「オーラルフレイル」。咬みにくさ・食べこぼし・むせ・滑舌の低下など、「口の衰え」の症状がある人は注意が必要になる。

 オーラルフレイルの兆候を早期に評価して、適切な対策を⾏うと、口の機能低下を緩やかにし、改善できると考えられている。

 研究グループは今回、大阪府民の健康をサポートするために開発されたアプリ「おおさか健活マイレージ アスマイル」の利用者を対象に、2020年と2021年に実施したWebアンケートに2年連続で答えた50歳以上の計7,591人の回答結果を分析した。

 その結果、2020年の調査では、全体の17%がオーラルフレイルに該当し、年齢が高いほど該当者の割合が大きいことが判明。2021年の調査では、全体の19%が過去1年間に転倒を経験したと回答した。

 分析したところ、その後1年間の転倒事故の発生率は、身体的フレイルがあることや、フレイルの認知度が低いことに加え、オーラルフレイルのある人で1.6倍と高いことが分かった。

 転倒事故は、骨折や長期入院による体力および生活の質の低下をまねき、要介護状態にいたる主な原因のひとつで、とくに高齢者にとって健康上の大きな懸念となっている。

 日常診療や健康診断などで、オーラルフレイルについてもチェックリストを適用し、受診者に結果をフィードバックすることで、転倒防止への意識を高められる可能性がある。

 研究は、大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センターの横山久代教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Geriatrics」にオンライン掲載された。

 「健康への関心が高く、日ごろから体を動かすことを心がけている方でも、"しっかりと噛め、何でも食べられる"ことに十分意識が向けられているとは限りません」と、横山教授は述べている。

 「オーラルフレイルの人は転倒リスクが高いということを周知することで、転倒の予防や介護の取り組みの強化につながると考えられます」としている。

大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センター
Oral Frailty as a Risk Factor for Fall Incidents among Community-Dwelling People (Geriatrics 2024年4月22日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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